各論目次

    1 信書開封罪(133条)

(信書開封)

 133条 正当な理由がないのに,封をしてある信書を開けた者 → 1年以下の懲役又は20万円以下の罰金

 「信書開封罪」とは,正当な理由がないのに封をしてある信書を開けるという犯罪です。

     (1) 客 体

 本罪の客体は,「封をしてある信書」です。

「信書」

 「信書」とは,特定の人から特定の人に対して宛てた,意思の伝達を媒介する文書をいいます。

   ※ 「特定の人」は,自然人・法人・法人格なき団体でもかまいません。

     発信人・受信人のいずれもが国・公共団体である場合は,個人の秘密を侵害するものではないので,「信書」にあたりません(通説)。

     特定人が,国・公共団体に宛てた場合は,個人的秘密を記載することが少なくないから,「信書」にあたるとするのが通説です(反対;木村)。

   ※ 信書という言葉の意味からみて,「意思を伝達する文書」にかぎるとするのが判例・通説です(大判明40・9・26,福田・前田・木村)。

      他方,事実の記載・感情の表現・図画・写真・原稿なども含まれうるとする見解もあります(大塚・大谷・川端)。

 信書の内容が作成者にとって秘密事項であるかどうかは問いません。

「封をしてある」

 「封」とは,破るか壊さないかぎり内容が認識できないように,信書と一体となるような態様で施す外包装置のことをいいます。

 封筒に入れて糊で封ずる場合などが典型例です。

   ※ 封筒をクリップで留めるだけでは,「封をした」とはいえません。

      信書を机の引き出しに入れて施錠することも,その装置が信書と一体となったものではないので,「封をした」とはいえません。

 信書は,「封をしてある」かぎり本罪の客体となりますので,発送の前か後かは問いません。

     (2) 行 為

 本罪の行為は,封をしてある信書を「開け」ることです。

 「開け」るとは,封を破棄して開くことをいいます。それによって信書の内容を知りうる状態になるので,本罪が成立します。

   ※ 本罪は,抽象的危険犯であるとするのが通説です(大塚・大谷,なお前田)。

      これに対して,本罪は,「封をしてある信書」という秘密の形式(親書が勝手に開かれない利益)を侵害する罪であり,信書を開けた場合に法益侵害はすでに発生することになるので,侵害犯であるとする見解も有力です(中森・山口)。

   ※ 封を破棄して開くことが必要ですから,それ以外の方法(光に透かすなど)で信書の内容を知っても,本罪にはなりません。

     (3) 違法性阻却事由

意 義

 封をしてある信書を開ける行為をし,行為者がそのことを認識していれば(構成要件的故意があれば),構成要件該当性が認められ,原則として本罪が成立します。

 ただし,「正当な理由」があれば,違法性が阻却されます(35条等)。

   ※ 権利者が開封に同意している場合については,構成要件該当性がないという見解(内田・山中)と,違法性を阻却するという見解(大谷)があります。

具体例

 信書の開封が法令上認められている場合は,違法性が阻却されます(刑訴法111条など)。

   ※ 同条1項前段は,「差押状又は捜索状の執行については,錠をはずし,封を開き,その他必要な処分をすることができる」としています。

 子に宛てられた信書を開ける場合,親権の行使(民法820条)の範囲内にあるかぎり,違法性が阻却されます(通説)。たとえば,母親が,家出した中学生の娘の居所を知るために,娘の男友達から来た手紙を開封した場合,本罪は成立しません。

 不和で別居中の妻宛に来た手紙を開封する行為は,正当な理由があるとはいえず,本罪が成立するでしょう。

     (4) 親告罪

告訴権者

 告訴をすることができるのは,「犯罪により害を被った者」(被害者)です(刑訴法230条)。

   ※ 厳密には,ほかに「被害者の法定代理人」なども告訴権者とされますが(231条以下),詳しくは刑訴法で勉強しましょう。

発信者

 「発信者」は,常に,告訴権を有します(大判昭11・3・24,通説,異説;西原)。

受信者

 「受信者」も,信書「到達後」は,告訴権を有するというのが上記判例です。

   ※ 通説は,受信者も,常に,告訴権を有するとします(団藤・大塚・大谷・川端・前田)。

       これに対して,山口教授は,本罪により保護されるのは「封をしてある信書」という秘密の形式であるとする立場から,発信者は封をせずに信書を発信するか否か自由であり,発信前において受信者を被害者と解することはできないとし,他方,受信後においては,受信者には他の者によって開封させることもできるという利益も認めうるとして,判例の立場が妥当であるとされます。

 

                                                                        秘密漏示罪