各論目次

      4 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(179条)

  (監護者わいせつ及び監護者性交等)
 179条1項 18歳未満の者に対し,
       その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて
       わいせつな行為をした者
           → 176条の例による(6月以上10年以下の懲役)
     2項 18歳未満の者に対し,
       その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて
       性交等(=性交・校門性交・口腔性交)をした者
           → 177条の例による(5年以上の有期懲役)

 「監護者わいせつ罪」は,「18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて,わいせつな行為をする」という罪です(1項)。
 「監護者性交等罪」は,「18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて,性交・肛門性交・口腔性交をする」という罪です(2項)。

意 義
 被害者が18歳未満で精神的に未熟で,かつ精神的・経済的に監護者に依存している状況において,監護者が(暴行・脅迫を用いるのではなく)そのような関係性を利用してわいせつ行為・性交等をした場合,(「抗拒不能」とまではいえないとしても)類型的に被害者の自由な意思決定にもとづくものとはいえないと考えられます。
 そこで,このような場合には,強制わいせつ罪(176条)・強制性交等罪(177条)と同等の悪質性があるものとして,これらと同様に処罰することにしたわけです(平29新設)(井田解説参照,橋本参照)。
   * なお,被害者が「13歳未満」のときは,本条ではなく,176条後段・177条後段が適用されます(井田解説)。

現に監護する者
 「現に監護する者」とは,法律上の監護権にもとづく者(民法820条参照)に限られず,事実上,現に監督・保護する者であれば,これにあたりうるとされます。
 ただし,親子関係と同視しうる程度に,(居住場所・生活費用・人格形成など)生活全般にわたって継続的な依存・保護の関係が形成されていることが必要であるとされます。
   * 養護施設等の職員については,具体的事情のもとで,これに該当する場合があるとされます(井田解説)。
     他方,雇用関係や,教師と生徒の関係など,必ずしも生活全般にわたる関係ではない場合は,類型的に自由な意思決定にもとづくものではないと断ずることはできないとされています(橋本参照)。

影響力があることに乗じて
 「影響力があることに乗じて」とは,影響力があることを明示して積極的にこれを利用することまでは必要ではなく,影響力があることにより可能となった状況において行為をすれば足りるとされます(井田解説)。

                                                                          未遂罪