各論目次

   第6款 凶器準備集合・結集罪(208条の2)

  (凶器準備集合・結集)

 208条の2

  1項 2人以上の者が他人の生命,身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において,

    凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者

       → 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

  2項 前項の場合(2人以上の者が他人の生命,身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合)において,

    凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者

       → 3年以下の懲役

   ※ 危険運転致死傷罪の削除(自動車運転死傷行為処罰法(平26施行)への移行)により,「208条の3」から「208条の2」になりました。

    第1目 意 義

 「凶器準備集合」罪(1項)は,「2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合」において,「凶器を準備して,または,凶器の準備があることを知って,集合するという罪です。

 「凶器準備結集」罪(2項)は,「前項の場合(2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合)」において,「凶器を準備して,または,凶器の準備があることを知って,人を集合させる罪です。

立法経緯

 本罪は,ヤクザが殴り込みのため凶器を準備して集合し,人心に不安を抱かせるという事態に対処するため追加されたものです(昭和33年)。

 その後,過激派集団などにも適用されましたが,現在ではその適用は減少しているとされます。

   ※ 最近だと,六本木のクラブにおける襲撃事件に関して,凶器準備集合罪で逮捕状が出されたという報道が記憶に新しいところです(平成24年12月)。

保護法益・罪質

 本罪の保護法益については,争いがありますが,①個人の生命・身体・財産とともに,②公共の平穏であると解すべきです(最判昭58・6・23,通説)。

 ①条文の位置・文言からすれば,(特定の)個人の生命・身体・財産に対する共同加害行為の予備罪(個人法益に対する罪)としての性格を有しているといえます。

 同時に,②立法の経緯からすれば,抗争の巻き添えによって,不特定または多数の人の生命・身体・財産が侵害される危険を生じさせるものとして,公共危険罪(社会法益に対する罪)としての性質を有しているといえます。

 ただし,学説では,①予備罪的性格を優先させる見解が多数であるのに対し,判例は,②公共危険罪的性格を重視する立場が確立しているといえます。

 立法の沿革を考慮すれば,判例のような理解にも一定の合理性があるといえるでしょう(西田,藤木・堀内・佐久間[むしろ公共危険罪として理解],なお川端・斎藤)(具体的な差異は以下で触れていきます。)。

    第2目 凶器準備集合罪(1項)

     1 「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した場合」

      (1) 状 況

 本罪が成立するためには,「2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える目的で集合した」という「状況」(構成要件的状況・行為の状況)が要求されます(団藤・大塚・大谷・曽根・川端・堀内・佐久間)。

   * ただし,この「状況」は,消火妨害罪(114条)における「火災の際」などと違って,①実行行為の前提としての状況のみでなく,②実行行為の結果として作り出された状況でもよいとされます(団藤)。

     つまり,①「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合」している状況を前提として,行為者が凶器を準備して(または凶器の準備があることを知って[以下省略])集合するという場合でもよいし,②行為者が凶器を準備して集合した結果として,「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した」という状況になった場合でもよいわけです。

   ** これに対して,「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した」という要件を,行為者が凶器を準備して集合した「結果」(構成要件的結果)とみる見解も有力です。

     つまり,「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した」という結果が生じた場合において,その集合者のうち,凶器を準備して集合した者を罰する趣旨の規定であると考えるわけです(山中,同旨;町野・中森・西田・高橋・林・山口)。

     「状況」説と「結果」説の差異は,行為者自身に共同加害目的が必要かということに関連します(後述)。

      (2) 共同加害の目的

       a 加害の対象

 上記のように,2人以上の者が「他人の生命・身体・財産」に対し共同して害を加える目的で集合することが必要です。

 公共の平穏に対する罪としての性質上,凶器を利用しないような罪(詐欺など)を目的とする場合は含まれません。

 他方,「生命・身体・財産」を侵害する意思があればよいので,個人法益に対する罪に限らず,国家法益に対する罪(公務執行妨害罪など)や,社会法益に対する罪(放火罪など)を犯す目的でもよいと解されます(団藤・大塚・西田・山中・山口など通説,最判昭58・6・23参照,反対;大谷・高橋)。

       b 加害目的の意義

 「共同して害を加える目的」(共同加害目的)とは,(他人の生命・身体・財産に対し)他の者と共同して加害行為を実行しようとする目的をいいます。

 共同加害目的というためには,A.みずから直接に加害する目的を意味するという見解(団藤・大塚・川端・山中)と,B.共同加害といえればよい以上,現場で共謀して加害行為をさせる目的などでもよいとする見解(大谷・中森・高橋・伊東・山口)があります。

 集合者の全員または大多数の集団意思として共同加害目的があることは要しません(最判昭52・5・6,通説)。

    ※ なお,同判例は,上記を前提に,行動を相互に目撃しうる場所に近接していた者のうち,少なくとも暴行に及んだ者あるいは及ぼうとした者らは,漸次波及的に共同加害目的を有するに至ったものと認められるとしました。

       c 迎撃の意思

 加害の目的は,積極的な加害を目指すのではなく,受動的な目的(たとえば,相手方が襲撃してきた場合には迎え撃って打ちのめすという目的)でもかまいません(最決昭37・3・27)。

 この場合,相手方の襲撃の蓋然性・切迫性を認識していなくても,襲撃がありうると予想し,その際には迎撃して加害するという意思があれば足りるものとされます(最判昭58・11・22)。

      (3) 集 合

 本罪の「集合」とは,2人以上の者が,共同加害の目的をもって,時・場所を同じくして集まることをいいます。

 すでに一定の場所に集まっていた2人以上の者が,共同加害目的を有するに至った場合も,これに含まれます(最決昭45・12・3)。

   * なお,条文の形式によれば「2人」でも本罪が成立しうることになりますが,公共的危険罪としての性格を考慮すれば,少なくとも公共の平穏を害する危険を有する程度の人数が集まることを要するものと解されます(堀内・西田)。

     2 行 為

 本罪の行為は,①「凶器を準備して」,または,②「凶器の準備があることを知って」,「集合」することです。

      (1) 凶 器

凶器の意義

 「凶器」とは,人を殺傷しうる器具を意味します。

 ①人の殺傷を本来の用途として作られた「性質上」の凶器(銃砲刀剣類など)のほか,②本来は人を殺傷するために作られたものではないが,使いようによっては凶器となりうる「用法上」の凶器(鎌・鉄パイプ・ガラス瓶など)が含まれます。

「用法上の凶器」の認定

 ただし,用法上の凶器といえるためには,本罪の公共危険罪的性格から,集団がそれを準備することによって,外観上,人に危険感を抱かせるに足りるものであることを要します(西田,最決昭45・12・3参照)。

 この観点からは,長さ1メートル前後の角棒でも,これにあたりうることになります(上記最決)。

 他方,凶器とする意図で準備されたダンプカーでも,人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず,社会通念に照らして直ちに人に危険感をいだかせるに足りないときは,本条の「凶器」にはあたらないとされます(最判昭47・3・14)。

    ※ 藤木博士は,上記最判につき「人に向かって突進する気構えがはっきりと見とれる段階で凶器と認定する趣旨であろう」とされています。

      なお,西田教授は,(別な下級審判例に関連してですが)凶器として使用される段階で凶器性を認めうるとすること(段階的認定)は,凶器概念を拡大することになるとして,集合の段階において本来危険感をいだかせるものに限定すべきであるとされています。

      (2) 準 備

 「準備」とは,凶器を,必要に応じて,いつでも本罪の加害行為に使用しうる状態におくことをいいます。

 準備の場所と集合の場所とは,必ずしも一致することは要しません。

 もっとも,場所が離れていて,加害行為に使用することが著しく困難な場合には,「準備」とはいえないでしょう(西田など)。

      (3) 集 合

意 義

 「集合」とは,前述のように,2人以上の者が時・場所を同じくして集まることをいいます。

 加害目的をもつに至った集団から離脱しなかったときも「集合」にあたります。

抽象的危険犯

 本罪は抽象的危険犯であり,集合の状況が「社会生活の平穏を害しうる態様のもの」であれば足りるとするのが判例です。

 それゆえ,迎撃形態の場合,相手方の襲撃の蓋然性・切迫性が客観的状況として存在することは必要ないと考えられます(最判昭58・6・23)。

   * なお,上記最判における団藤補足意見は,「凶器の種類・数量,集合した人数,周囲の状況など,行為当時の具体的な要因をすべて総合的に考察判断して,その行為の規模・態様等が,定型的にみて,個人の生命・身体・財産および公共的な社会生活の平穏を害する抽象的危険を感じさせるようなものであることを要する」とし,構成要件については,解釈上,必要かつ十分なしぼりをかけることが要請されるとしています(同旨;西田)。

     予備罪的性格を優先させる多数説からは,抽象的危険犯ととらえるとしても,個人の生命・身体・財産に対する危険が必要であるなどとして,相手方の襲撃の(ある程度の)可能性が存在しなければならないと主張されています(高橋・林など)

        ※ 曽根教授は,本罪を第一次的には個人法益に対する罪であると解する立場からは,共同加害の危険が現実に発生したことを要求する具体的危険犯説が採られることになるとされています。

     3 共同加害目的

行為者自身の「共同加害目的」の要否

 本罪の故意(構成要件的故意)として「2人以上の者が共同加害目的で集合」することの認識が必要ですが,さらに,行為者自身も「共同加害目的」を有することが必要かについては争いがあります。

A.不要説

 前述のように,「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した」という要件を「状況」と解すると,行為者は,その状況を認識すれば足り,自身は共同加害目的を有していなくてもよい,という結論を導きうることになります(団藤[自らは単に気勢をそえる目的でもよい])。

B.必要説

 もっとも,「状況」説からも,安易に他人目的の場合まで含めるべきではないなどとして(佐久間),行為者自身も「共同加害目的」を有することが必要であるとする見解が多数と思われます(大塚・大谷・川端)。

   * 本条を,「2人以上の者が……共同して害を加える目的で集合した」という「結果」が生じた場合において,その集合者のうち,凶器を準備して(凶器の準備があることを知って)集合した者を罰する趣旨の規定であると考える立場(結果説)からは,行為者自身も「共同加害目的」を有することが必要であると主張されます(山中など)。

        ※ なお,西田教授は,共同加害目的が必要であるとしますが,現実に加害行為を行うというまでの目的でなくとも,抗争の現場に赴き加勢する目的で足りるされています。

        ※※ 前掲最判昭52・5・6について,A説をとっているとの評価もありますが(齋野『百選Ⅱ』),同判例は「集団の全員または大多数が共同加害目的を有する必要はない」としたものであって,行為者自身に共同加害目的が不要であるとはしていないとの見方も有力です(高橋・山口)。

     4 成立時期・終了時期

成立時期

 本罪は,2人以上の者が共同加害目的をもって,凶器を準備するなどして集合することにより成立します(堀内)。

継続犯

 そして,本罪は,継続犯なので,行為者が凶器を準備して(凶器の準備があることを知って)集合しているかぎり,継続して成立します(最決昭45・12・3)。

終了時期

 争いがあるのは,集合の目的である共同加害行為が開始された後も,なお本罪が成立しつづけるのか(存続説),終了するのか(終了説)ということです。

 この問題の実益は,共同加害行為(抗争)開始後に集団に参加した者にも本罪が成立しうるかというところにあります。

 前掲最決昭45・12・3は,「本罪は,個人の生命・身体・財産ばかりでなく,公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものと解すべきであるから,『集合』の状態が継続するかぎり,同罪は継続して成立しているものと解する」として,存続説をとっています。

 本罪の公共危険罪的性格を考慮すれば,判例の立場を支持しうるでしょう。共同加害行為開始後においても,集合状態が続いているかぎり公共の危険も依然として存続しているといえ,むしろ乱闘後になれば公共の危険はより増大するといえるからです。

 それゆえ,共同加害行為開始後に参集した者についても,本罪が成立しうることになります(藤木・川端・斉藤・西田,他方;堀内・佐久間)。

   * これに対して,予備罪的性格を優先させる多数説によれば,実行の段階に入った以上は,もはや予備罪としての本罪が成立することはないと解されることになります(なお,林)。共同加害行為開始後に参集した者については,本罪ではなく,加害行為により成立する犯罪の共犯として処理すべきものとされます(中森・山口など)。

     5 共 犯

実行共同正犯

 本罪は必要的共犯(集合犯・集団犯)であり,集合現場における実行共同正犯は,本罪の正犯に包含されているから,共同正犯の規定(60条)を適用する必要はないと考えられます(大谷・西田・高橋・山口など通説)。

共謀共同正犯

 共謀共同正犯については,A.正犯者は集合の現場において共同加害の目的をもつ必要があること,別に結集罪(2項)の規定もあることから,共謀共同正犯の成立は認められないとする否定説(藤木・大谷・中森・高橋,東京地判昭48・4・16)と,B.共謀共同正犯それ自体を否定するのでなければ,本罪のみを異なって取り扱う理由はないとする肯定説(西田・伊東・山口・渡辺『大コメ』,東京地判昭63・3・17)が対立します。

教唆犯・従犯

 本罪の教唆犯(61条)・従犯(62条)が成立しうることについては争いありません。

     6 罪 数

集合の段階

 集合の段階においては,本罪が公共危険罪的性格をもつことから,殺人予備罪や放火予備罪などと本罪が成立して,観念的競合(54条1項前段)となります(大谷・川端,東京高判昭49・3・27参照)。

加害行為の実行段階

 共同加害目的の内容である殺人・傷害・放火などが現に実行された段階においては,本罪の公共危険罪の性質を重視する立場からすれば,殺人罪などと本罪は法益を異にするものなので,併合罪になると解されます(最決昭48・2・8,藤木・西田・佐久間,なお堀内)。

   * 他方,本罪の予備罪的性格を優先させる多数説からは,加害行為の未遂・既遂に吸収されるとも考えられますが(前田参照),公共危険罪的性格も付加されると解されていることから,吸収はされずに,牽連犯(54条1項後段)になるとみるのが多数説です(大塚・大谷・川端・高橋・山口)。

    第3目 凶器準備結集罪(2項)

 本罪は,行為者自身が集合する場合(1項)よりも重く処罰されます。

 これは,結集行為の主体は集団の主導的役割を果たす場合が多いからであると考えられます(前田・佐久間)。

     1 状 況

 本罪も,「2人以上の者が他人の生命・身体・財産に対し共同して害を加える目的で集合した」という状況が必要です。

     2 行 為

 本罪の行為は,①凶器を準備して,または,②凶器の準備があることを知って,人を集合させることです。

態 様

 「人を集合させる」とは,他人に働きかけて,集合の状態を作り出す(時および場所を同じくさせる)ことをいいます。

 集合させられた人(集合者)が,凶器を準備することや,凶器の準備があることを知っていることは要しません。

 ①共同加害の目的で,あらたに集合させる場合のほか,②すでに集合している者に共同加害の目的を抱かせる場合や,③共同加害の目的で集合している者に対して,解散させないで指揮・統率して集合を継続させる場合なども,含まれると解されます(藤木・大谷)。

 なお,本罪も継続犯です。

「結集」と「集合教唆」との関係

 「結集罪」は集合状態を作り出すものなので,「集合罪の教唆」との関係を明らかにする必要があります。

 この点,結集罪は,集合罪より重く処罰されることからすれば,集合状態を形成するについて「主導的な役割」を演じる行為,すなわち,2人以上の者を集合させて自己の支配下に置く行為が必要であると考えられます。

   ※ この場合,集合の教唆にあたる行為は,結集罪に吸収されることになります(前田)。

 個々の集合行為の単なる慫慂行為,すなわち,1人の者に集合を働きかけるような行為は,集合罪の教唆犯にとどまるものといえます(大谷・川端)。

   ※ なお,単なる扇動行為は,集合罪の従犯にあたると解されます(前田)。

     3 共 犯

 結集罪の共謀共同正犯については,集合罪に関する肯定説はもとより,否定説**からも成立が認められるとされています(山中参照)。

   * 西田教授は,「自ら集合させる行為をする必要はないであろうから,共謀共同正犯的類型も含むと解すべきであろう。」とされています。

   ** 他方,大谷教授も,「『集合させるもの』は,必ずしも集合の現場に参集する必要はないから,その者の集合させる行為が他の者との共謀によるときは,共謀共同正犯が成立する。」とされています(いうまでもなく「共謀共同正犯」自体を否定する説は別論です。)。

     4 罪 数

 同一人が同じ機会に集合罪と結集罪をともに行ったときは,包括して重い結集罪が成立すると考えられます(大塚・大谷・川端・中森・高橋など通説,最決昭35・11・15参照)。

 

                                                                            過失傷害の罪