各論目次

 第5章 財産に対する罪

   * いよいよ最後の章です。といっても,分量的にはまだ3分の1くらい残ってそうです。受験生感覚ではもっと多いかもしれません。

 「財産に対する罪」(財産罪・財産犯)は,個人の「財産」を保護しようとする犯罪です。刑法2編36章~40章において,以下のものが定められています。   

   ① 窃盗および強盗の罪(36章) 

   ② 詐欺および恐喝の罪(37章)

   ③ 横領の罪(38章)

   ④ 盗品等に関する罪(39章)

   ⑤ 毀棄および隠匿の罪(40章) 

 通常ですと,まず総説として財産罪の分類などが論じられるのですが,個々の犯罪を勉強してからの方がわかりやすいと思われますので,後で「まとめ」という形で勉強したいと思います。
 ここでは,今後の話をわかりやすくするため,各章の基本となる犯罪の概略だけ確認しておきます。

窃盗・強盗の罪(36章)
 窃盗罪(235条)は,他人が占有している物を盗む罪です。空き巣・万引き・スリなど色々な態様があります。
 強盗罪(236条1項)は,暴行または脅迫を用いて,他人が占有している物を盗む罪です。相手をボコボコにしたり銃を突きつけるなどして,反抗できないようにして金品を奪うような場合です。強盗にはいろいろなバリエーションがありますが,それは後で勉強しましょう。
 窃盗と強盗は,相手が占有している物をその意思に反して盗む点で共通することから,同一章に併せて規定されています。暴行・脅迫を手段とするか否かに違いがあります。

詐欺・恐喝の罪(37章)
 詐欺罪(246条1項)は,人を欺いてその占有する物を交付させる罪です。たとえば,うその投資話で金を出させたり,代金を支払うつもりもないのにレストランで食事を提供させるような場合が,これにあたります。
 恐喝罪(249条1項)は,人を恐喝してその占有する物を交付させる罪です。たとえば,「不倫をばらされたくなければ金をよこせ。」と脅したりするような場合です。反抗できないほどの暴行・脅迫を加えると強盗になってしまうので,それに至らない程度の暴行・脅迫にとどまる場合ということになります。
 「窃盗・強盗」・「詐欺・恐喝」は,相手が占有している物を奪う点で共通します。しかし,「窃盗・強盗」が相手の「意思に反して」盗むのに対して,「詐欺・恐喝」は,錯誤や畏怖はあるものの,一応は相手の「意思にもとづいて」差し出させる点が異なります。

横領の罪(38章)
 横領罪(252条)は,自己が委託されて占有している他人の物を横領する罪です。たとえば,預かっていた金を勝手に使ってしまうような場合です。
 「窃盗・強盗」・「詐欺・恐喝」が「相手が占有」している物を奪うのに対して,「横領」は「自己が占有」しているものを横取りする点に違いがあります。
 なお,占有を離れた他人の物(落とし物など)をネコババしたときは,遺失物等横領罪(254条(「占有離脱物横領罪」ということもあります。))となります。

盗品等に関する罪(39章)
 盗品等関与罪(256条)は,「窃盗・強盗」・「詐欺・恐喝」・「横領」などにあたる行為によって得られた物(盗品等)を保管したり買い取ったりするような罪です。
 「窃盗・強盗」・「詐欺・恐喝」・「横領」が物を直接領得するものであるのに対して,盗品等関与罪は他人が領得した物を更に領得等するものです。いわゆる事後共犯的な性質を有するものといえます。

毀棄・隠匿の罪(40章)
 毀棄・隠匿の罪は,他人の物を壊したり隠したりするような罪です。「窃盗・強盗」・「詐欺・恐喝」・「横領」は基本的に他人の物を自分のものにしようという意思で行う罪ですが,「毀棄・隠匿」はこのような意思なく単に物を使えないようにするところが異なります。
 たとえば,他人の腕時計を勝手に持ってきて自分の机に入れておいたというような場合でも,それが欲しくて盗ってきたのであれば窃盗罪ですが,単に相手を困らせてやろうと思って隠したのであれば毀棄・隠匿の罪となります(判例・通説)。
   * 後者の場合,正確には「器物損壊罪」(261条)となります。一般の語感とは少しずれるかもしれませんが,ここでは「損壊」の中に隠すことも含まれることになります(判例・通説)。

 

                                                                      窃盗罪(1)