各論目次

    3 証人等威迫罪(105条の2)

(証人等威迫)

 105条の2 自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し,

         当該事件に関して,正当な理由がないのに面会を強請し,又は強談威迫の行為をした者

               ↓

         1年以下の懲役又は20万円以下の罰金

意 義

 証人等威迫罪は,

(1)「刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者」,または,(2)「その親族」に対し,

当該事件に関して,(ア)正当な理由がないのに面会を強請し,または,(イ)強談威迫の行為をするという犯罪です。

立法経緯

 本罪は,刑事事件の証人などが犯人側から加えられる「お礼参り」をおそれて正しい証言ができなくなることを防ぐため,昭和33年の刑訴法改正に伴って創設されたものです。

保護法益

 本罪は,刑事事件の証人等の個人的平穏と,刑事司法の適正な運用を保護するためのものです(大阪高判昭35・2・18)。

     (2) 客 体

 本罪の客体は,自己・他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者,または,その親族です。

 本罪は「他人の刑事事件」のみでなく「自己の刑事事件」に関しても成立します。

   ※ 証人として証言を終えた者であっても,再度喚問されることもありうるから,事件の確定前にこれを威迫したときは,本罪が成立します(前掲大阪高判昭35・2・18)。

     (3) 行 為

 本罪の行為は,当該事件に関して,正当な理由がないのに「面会を強請」し,または,「強談威迫の行為」をすることです。

面会強請

 「面会を強請」とは,相手方の意に反して面会を強要することです。

 下級審判例は,「『面会の強請』は,直接相手方の住居・事務所等において行うことを要し,書信・電話等によって間接に行われるものは,本罪を構成しない」としています(福岡高判昭38・7・15,同旨;大塚・大谷・川端・前田)。

 これに対して,文書や電話などの間接的方法を除く理由はないとする見解も有力です(西田・山中・佐久間)。

強談・威迫

 「強談」とは,言語をもって自己の要求に応ずるように迫ることです。

 「威迫」とは,言語・態度によって気勢を示し,不安・困惑の念を生じさせることです。

 「威迫」には,不安・困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれると解されます(直接相手と相対する場合にかぎられません)(最判平19・11・13)。文書や電話による場合であっても被害者が不安・困惑の念をいだくことは十分にありうるといえるでしょう(西田・山中・山口,なお藤木,反対;大塚・大谷)

   ※ 本条は,抽象的危険犯と解されるので,面会の強請・強談威迫の行為については,刑事司法の適正な運用を侵害する可能性があれば足ります(福岡高判昭51・9・22)。

     (4) 故意(構成要件的故意)

 本罪の故意(構成要件的故意)は,相手方が,自己・他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者,またはその親族であることを認識し,かつ,これに対し,当該事件に関して,正当な理由がないのに面会を強請し,または強談威迫の行為をすることの認識・認容です。

   ※ 公判の結果に影響を及ぼそうという目的などは必要ありません(東京高判昭35・11・29)。

 

                                                                      社会的法益に対する罪1