第3節 国交に関する罪(92条−94条)                                               各論目次

保護法益

 「国交に関する罪」は,「国交の円滑」(国家の国際的地位)を保護するためのものと考えられます(平野・藤木・大谷・中森・前田)。

  ※ 国際法上の義務にもとづき外国の法益を保護するものとする見解もありますが(団藤・大塚),〃宰,蓮に楮瓩髻岾梓気亡悗垢觝瓠廚慮紊傍定しており,これを「国家」(日本国)に対する罪としている点は疑いないし,△錣国の刑法が外国の法益を直接保護しているとは考えにくいとの批判があります。

類 型

 「国交に関する罪」として,以下のものが規定されています。

   ヽ姐餽饐和参等罪(92条)

  ◆〇篝鑞夙罪・陰謀罪(93条)

   中立命令違反罪(94条)

    1 外国国章損壊等罪(92条)

(外国国章損壊等)

 92条1項 外国に対して侮辱を加える目的で,その国の国旗その他の国章を損壊し,除去し,又は汚損した者

            ↓

         2年以下の懲役又は20万円以下の罰金

 「外国国章損壊等罪」は,外国に対して侮辱を加える目的で,その国の国章を損壊・除去・汚損するという犯罪です。

客 体

 本罪の客体は,外国の「国旗その他の国章」です。

 「国章」とは,国を示すための一定の物で,国旗のほか,大使館の徽章や軍旗などがこれにあたります。

  ※ 国旗等については,(A)外国の国家機関が公的に掲揚しているものに限られるとする見解(大谷),(B)その国の権威を象徴するものとして公共の場(国際競技場など)に掲揚されているものは含まれるとする見解(山口,なお中森・前田),(C)広く私人が掲揚しているものも含まれるとする見解(大塚)があります。

行 為

 本罪の行為は,国章を「損壊」・「除去」・「汚損」することです。いずれも外国の威信・尊厳を表彰する国章の効用を滅失または減少させるものです。

 「損壊」とは,国章自体を破壊・毀損する方法です。

 「除去」とは,移転・遮蔽等による方法です。ベニヤ板によって国章を遮蔽する行為も,これにあたります(最決昭40・4・16)。

 「汚損」とは,物を付着させて嫌悪感を抱かせる方法です。

主観的要素

 本罪は,故意のほかに,「外国に対して侮辱を加える目的」で行うことを要します(目的犯)。

請求(訴訟条件)

 92条2項 前項の罪 → 外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない

 外国国章損壊等罪は,外国政府の「請求」がなければ公訴を提起することができません。

  ※ 「公訴を提起する」(起訴)とは,検察官が,特定の事件につき,裁判所の審判(審理・判断)を求めて訴えることです(刑訴法247条)。

    刑事事件については検察官が裁判所に訴えを起こすのですが,本罪については,上記「請求」がなければ,これができないわけです(このように,訴訟手続を有効に成立させ,これを継続させるための条件のことを「訴訟条件」といいます(詳しくは,刑訴法で勉強します))。

    これは,外国の名誉侵害の問題を検察官の裁量に委ねるのは相当でないということを考慮したものです。

    2 私戦予備罪・陰謀罪(93条) 

(私戦予備及び陰謀)

 93条 外国に対して私的に戦闘行為をする目的で,その予備又は陰謀をした者 → 3月以上5年以下の禁錮

      ただし,自首した者 → その刑を免除      

 「私戦予備罪・陰謀罪」は,外国に対して私的に戦闘行為をする目的で,その予備・陰謀をするという犯罪です(目的犯)。

  ※ 現行法は,私戦の予備・陰謀だけを罰しています(「私戦罪」というものはありません)。

     もし,私的戦闘(私戦)が開始されて,殺人・放火などがなされたときは,本罪のほかに殺人罪・放火罪などが成立します。

 私戦予備・陰謀をしたが,自首した者は,その刑が免除されます(必要的免除)。

    3 中立命令違反罪(94条)

(中立命令違反)

 94条 外国が交戦している際に,局外中立に関する命令に違反した者 → 3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金

 「中立命令違反罪」は,「外国が交戦している」という状況において,「局外中立に関する命令」に違反するという犯罪です。

 「局外中立に関する命令」とは,「わが国が交戦国のいずれにも加担しないことを宣言し,併せて国民に対しても,そのどちらにも便益を与えてはならない旨を指示して発する命令」をいいます。

  ※ 「局外中立に関する命令」の具体的な内容は,外国が交戦している際に発せられる命令によって決まることになります。つまり,命令が発せられなければ,なにが処罰されるのかが具体的には決まらないわけです。このように,法律で処罰の対象となる行為を一応定めたうえで,その具体的な内容は下位の命令に委ねるものを「白地刑罰法規」といいます(この言葉は,総論の「罪刑法定主義」のところに出てきます)。

 

                                                                      国家の作用に対する罪1