第1節 内乱に関する罪(77条−80条)                                               各論目次

意 義

 「内乱に関する罪」は,わが国の内部から国家の存立をあやうくするものです。

類 型

 以下のものが規定されています。

   ‘睛雕瓠複沓珪鬘厩燹法ζ睛靆た觝瓠米云鬘温燹

  ◆‘睛靈夙・陰謀罪(78条)

   内乱等幇助罪(79条)

    1 内乱罪(77条)

(内乱)

 77条1項 国の統治機構を破壊し,又はその領土において国権を排除して権力を行使し,

        その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として

        暴動をした者 

           ↓

        内乱の罪とし,次の区別に従って処断

 内乱罪は,「憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的」として「暴動」をするという犯罪です。

 暴力による革命などがこれにあたります(刑法制定後,本罪が適用されたことはありません)

 本罪は,いわゆる「確信犯」・「政治犯」の典型といわれます。

     (1) 主 体

 本罪は,「暴動」をするものです。 「暴動」ですから,当然,これをする「主体」は多数人ということになります。

 このように複数の者の行為が必要とされている犯罪のことを「集合犯」(衆合犯・集団犯)といいます。

  ※ 「集合犯」という言葉は,総論の「罪数」のところにも出てきますが,まったく別な概念なので注意してください。

     (2) 行 為

暴 動

 本罪の行為は,「暴動」をすることです。

 「暴動」とは,多数の者が結合して相当な規模の暴行・脅迫を行うことをいいます。

 一般に,「暴行」とは不法な有形力(物理的な力)の行使,「脅迫」とは害悪の告知(「害を加える」と告げること)をいいます。

 本罪における「暴行」は,人に対してするものでも,物に対するものでも構いません。このようなものを「最広義の暴行」といいます。

殺人罪・放火罪などは成立しない

 本罪の「暴動」は,統治の基本秩序を壊乱する手段ですから,殺人・放火など程度の高いものも含みます

 したがって,殺人・放火などが「壊乱」の手段として行われたときは,内乱罪のみが成立し,ほかに殺人罪・放火罪などは成立しません。

     (3) 主観的要素

      ア 故意(構成要件的故意)

 本罪の故意としては,「暴動」をすることの認識(・認容)が必要です。

  ※ なお,本HPでは,故意と過失の区別(未必の故意)に関して,いわゆる「認容説」を前提とします(団藤・大塚・板倉・日高・裁書研など通説,最判昭23・3・16参照)。

      イ 目 的

目的犯

 本罪の主体である多数者は,さらに「憲法の定める統治の基本秩序を壊乱する目的」をもっていなければなりません。

 このように一定の目的が要素となっている犯罪を「目的犯」といいます。

憲法の定める統治の基本秩序を壊乱する目的

 「憲法の定める統治の基本秩序を壊乱する目的」とは,日本国の政治的な基本組織を不法に変革・破壊する目的をいいます。

 「国の統治機構を破壊する目的」と,「国の領土において国権を排除して権力を行使する目的」は,その例を示したものということになります。

  ※ 「国の統治機構を破壊する」とは,内閣制度を不法に破壊することなどをいいますが,個々の内閣の打倒はこれにあたりません。

    「国の領土において国権を排除して権力を行使する」とは,日本国の領土において国の権力行使を排除することをいいます(たとえば,九州を実力で占拠して独立国を宣言するなど)。

     (4) 処罰の態様

内乱罪は,加功者の演じた役割によって法定刑に軽重があります。

      ア 首謀者(1号)

       1号  首謀者 → 死刑又は無期禁錮

 首謀者とは,中心となって暴動を統率する者です。1人とはかぎりません。

   [用語説明] 「懲役」と「禁錮」

    「懲役」(12条)と「禁錮」(13条)は,いずれも身体の自由を奪う刑罰で,「刑事施設」(刑務所)に拘置されるものです。

    ただ,「懲役」は「所定の作業」(刑務作業)を行わせられるのに対して(12条2項),「禁錮」にはこれがありません(13条2項)。

    刑法をみると,「懲役」に処せられるとされている犯罪が多いのですが,内乱罪については,「政治犯」であり,「一定の非ハレンチ的動機(不道徳でない動機)による犯罪者に対しては,通常の犯罪者と異なる処遇をする」という思想から,作業を強制されない「禁錮」の方が定められています。

      イ 謀議参与者・群衆指揮者と職務従事者(2号)

       2号  謀議に参与し,又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し,その他諸般の職務に従事した者

               ↓

           1年以上10年以下の禁錮

        (ア) 謀議参与者・群衆指揮者(前段)

謀議参与者

 「謀議に参与し……た者」とは,内乱の計画に参加して首謀者を補佐した者をいいます。

群衆指揮者

 「群衆を指揮した者」とは,暴動の現場において,または,現場に臨むにあたって,群衆を指揮した者をいいます。

        (イ) 職務従事者(後段)

 「その他諸般の職務に従事した者」とは,前段の謀議参与者・群衆指揮者以外の役割を担った者です(経理や弾薬・食料の運搬の指揮をとる者など)。

      ウ 暴動参加者(3号) 

       3号  付和随行し,その他単に暴動に参加した者 → 3年以下の禁錮

 「付和随行し,その他単に暴動に参加した者」とは,暴動に加わり,指揮者の命令に従って行動し,暴動の勢力を助けた者をいいます。

     (5) 未 遂

     2項 前項の罪の未遂  → 罰する

         ただし,同項第3号に規定する者 → この限りでない

 内乱罪は,「未遂」も罰せられます(内乱未遂罪)。

 ただし,77条1項3号に規定する者(単なる暴動参加者)は,罰せられません。

   [用語説明] 「この限りでない」

    「この限りでない」という言葉は,「そういう場合もあれば,そうでない場合もある」という意味にもとれますが,法令用語としては,通常,その前に出てくる規定の適用を打ち消すときに使われます。したがって,ここでは,「罰しない」という意味になります。

    2 予備罪・陰謀罪(78条)

(予備及び陰謀)

 78条 内乱の予備又は陰謀をした者 → 1年以上10年以下の禁錮

 内乱罪には,未遂(実行の着手)よりもさらに前の段階である「予備・陰謀」を処罰する規定があります。

予 備

 内乱の「予備」とは,内乱の実行を目的とする準備行為をいいます(武器・食料を調達すること,同志を募ることなど)。

陰 謀

 内乱の「陰謀」とは, 2人以上の者が,内乱を計画し,合意に達することをいいます。 

 ※ 予備・陰謀罪は,暴動が始まれば未遂罪に吸収されますし,未遂罪は内乱が既遂に至れば内乱(既遂)罪に吸収されます。 

    3 内乱等幇助罪(79条)

(内乱等幇助)

 78条 兵器,資金若しくは食糧を供給し,又はその他の行為により,前2条の罪を幇助した者 → 7年以下の禁錮

 本罪は,内乱・内乱未遂罪(77条)と,内乱予備・陰謀罪(78条)の幇助行為を独立の犯罪としたものです。

  ※ 「幇助」については,62条1項が規定していますが,ここでこれを適用すると刑が軽くなりすぎる場合があるため,特別な規定をおいたわけです。

 「幇助」とは,一般に,正犯を補助して実行行為を容易にする行為をいいます。ここでは,内乱や内乱予備などを容易にすることを意味します(兵器・資金・食料・陰謀場所の提供など)。

    ※ 自首による刑の免除(80条)

(自首による刑の免除)

 80条 前2条の罪を犯した者であっても,暴動に至る前に自首したとき → その刑を免除

意 義

 内乱予備・陰謀罪(78条),内乱等幇助罪(79条)を犯した者であっても,「暴動に至る前」に自首をすれば,刑が免除されます。

自 首

 「自首」とは,「罪を犯した者が,自発的に自己の犯罪事実を捜査機関に申告して,その処分を求める意思表示」と定義されます。

  ※ 「意思表示」とは,「法によって実現される効果を欲し,そのことを発表する行為」をいいます(詳しくは民法で勉強してください)。

 自首をした者については,42条1項が,一般的に,「その刑を減軽することができる」と規定しています。つまり,裁判官の判断で,刑を軽くしてもよいし,しなくてもよいわけです(任意的減軽)。

 これに対して,本条の場合は,自首をすれば,必ず「刑を免除する」ことになります(必要的免除)。これにより,自首を強く促して暴動を未然に防ごうとしているわけです。

   [用語説明] 刑の免除

    「刑の免除」は,有罪判決の一種ですが(刑訴法333条・334条),処罰はされません。現に処罰はしなくても,判決で「犯罪が成立する」ということを示すことで,制裁として足りると考えるものです。

「暴動に至る前」

 「暴動に至る前」とは,暴動の実行に着手する前という意味です。

 したがって,内乱が未遂に至ってしまった後に自首をしても,本条(必要的免除)は適用されません(一般の自首(任意的減軽・42条)は可能です)。

                                                                         

                                                                            外患に関する罪