各論目次

  第3節 出水・水利に関する罪(119条〜123条)

 「出水」に関する罪(119条〜122条・123条後段)は,水力の不法な使用によって公共の安全を害する罪で,放火の罪と同じく,公共危険犯です。水害も,不特定または多数の人の生命・身体・財産に対して危険を及ぼすので,同様に重く罰せられるのです。

 「水利」に関する罪(水利妨害罪,123条前段)は,水利権(水を利用する権利)を保護法益とするもので,出水に関する罪とは罪質を異にします。ただ,水利妨害は出水の危険を伴うことから,同じ章の下に規定されています。

    1 現住建造物等浸害罪(119条)

(現住建造物等浸害)

 119条 出水させて,現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物,汽車,電車又は鉱坑を浸害した者

          ↓

       死刑又は無期若しくは3年以上の懲役

 出水させて,現に人が住居に使用し,または,現に人がいる建造物・汽車・電車・鉱坑を浸害する犯罪です。

 「浸害」とは,水力によって客体を流失・損壊または効用の滅失・減損をもたらすことをいいます。

    2 非現住建造物等浸害罪(120条)

(非現住建造物等浸害)

 120条1項 出水させて,前条に規定する物(現住建造物等)以外の物を浸害し,よって公共の危険を生じさせた者

            ↓

         1年以上10年以下の懲役

      2項 浸害した物が自己の所有に係るときは,

         その物が差押えを受け,物権を負担し,賃貸し,又は保険に付したものである場合に限り

            ↓

         前項の例による(1年以上10年以下の懲役)

 出水させて,「現住建造物以外の物」を浸害し,よって公共の危険を生じさせる犯罪です。

   ※ 放火罪のように「非現住建造物等」(109条)と「建造物等以外の物」(110条)とを区別せずに,それらをまとめて客体としています。

   ※ 公共危険犯ですから,処罰規定を異にする数個の目的物(たとえば「現住建造物」と「それ以外の物」)を浸害したときは,もっとも重い規定が適用されます(大判明44・11・16)。

    3 水防妨害罪(121条)

(水防妨害)

 121条 水害の際に,水防用の物を隠匿し,若しくは損壊し,又はその他の方法により,水防を妨害した者 → 1年以上10年以下の懲役

 水害の際に水防を妨害する犯罪です。火災の際の「消火妨害罪」に対応するものです。

    4 過失建造物等浸害罪(122条)

(過失建造物等浸害)

 122条 過失により出水させて,第119条に規定する物(現住建造物等)を浸害した者

       又は第120条に規定する物(現住建造物等以外の物)を浸害し,よって公共の危険を生じさせた者 → 20万円以下の罰金

 前段は,過失により「現住建造物等」を浸害するものです(抽象的危険犯)。

 後段は,過失により「現住建造物等以外の物」を浸害して公共の危険を生じさせるものです(具体的危険犯)。

 失火罪(116条)に相当する規定ですが,業務上過失・重過失による加重類型はありません。

    5 水利妨害罪・出水危険罪(123条)

(水利妨害及び出水危険)

 123条 堤防を決壊させ,水門を破壊し,その他水利の妨害となるべき行為又は出水させるべき行為をした者

          ↓

       2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金

     (1) 出水危険罪(後段)

 「出水させるべき行為」をする犯罪です。

 「出水させるべき行為」とは,出水の危険を生じさせる一切の行為をいいます。「堤防の決壊」・「水門の破壊」は,その例示です。

     (2) 水利妨害罪(前段)

 「水利の妨害となるべき行為」をする犯罪です。

 「水利」とは,水の利用のすべてを含みます。

   ※  ただし,交通のための水利は「往来を妨害する罪」(124条以下)で,飲料のための水の利用は「飲料水に関する罪」(146条以下)で保護されるので,本罪には含まれません。

 被害者に,契約または慣習法上,水の使用につき権利があることが必要です(大判昭7・4・11)。

 

                                                                    往来を妨害する罪