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  第6節 不正指令電磁的記録に関する罪(168条の2・168条の3)

意 義

 近年,不正指令電磁的記録(いわゆるコンピュータ・ウイルス)によって,広い範囲の電子計算機(コンピュータ)が意図に反して実行され,社会的被害をもたらす事態が生じています。

 これを放置すれば,電子計算機による情報処理を信頼することができなくなり,ひいてはコンピュータ・ネットワークによる情報処理システムが崩壊してしまうおそれがあります。

 そこで,コンピュータ・ウイルスの作成などを処罰するため,「不正指令電磁的記録に関する罪」として,①不正指令電磁的記録作成等罪(168条の2 )と,②不正指令電磁的記録収得等罪(168条の3 )が新設されました(平成23年改正)。

   * コンピュータ・ウイルスとは,人のコンピュータシステムの破壊やいたずら目的で不正に作られた特殊なプログラムをいいます(西田)。

保護法益

 電子計算機にコンピュータ・ウイルスを感染させて他人の業務を妨害したときは,電子計算機損壊等業務妨害罪(234条の2)として,個人法益に対する罪となりえます。

 しかし,コンピュータ・ウイルスの蔓延は,個々の電子計算機に被害を与えるにとどまらず,社会一般に重大な損害を与えることになります。

 それゆえ,本罪は,「コンピュータ・ネットワークの安全性に対する公衆の信頼」を保護法益とするものと考えられ,社会法益に対する罪に位置づけられることになります(大谷・佐久間参照)。

 

                                                             不正指令電磁的記録作成等罪