各論目次

      2 常習賭博罪(186条1項)

  186条1項 常習として賭博をした者 → 3年以下の懲役

 「常習賭博罪」は,常習として賭博をする罪です。

       ⑴ 主 体

賭博常習者

 本罪の主体は,賭博の常習者です。

 賭博の常習者とは,賭博を反復・累行する習癖のある者をいいます(最判昭26・3・15)。必ずしも職業的に賭博を行う者であることは要しません。

 上記の習癖が認められる以上,1回の行為でも本罪にあたります。

加減的身分犯(不真正身分犯)

 本罪は,行為者が常習性という身分を有することにもとづいて刑が加重される賭博罪(前条)の加重類型であり,加減的身分犯と解されます(通説)。

常習性の法的性格

 常習性については,A.「行為」の属性であって「違法」要素であるとする見解もありますが(平野・前田),一般に,1回の賭博行為でも,常習性が認定されれば,本罪にあたると解されることからすれば,B.「行為者」の属性であって「責任」要素であると解するのが妥当です(団藤・堀内・川端・西田・井田など多数説,最決昭54・10・26参照)※※

   ※ A説によれば,「行為者が反復して賭博行為をしたときにはじめて,その全体が本罪を構成する」と解することになろうとの指摘があります(井田)。

   ※※ ほかに,C.行為および行為者の両者の属性とする見解(大塚・大谷・山口・島田)などもあります。

常習性の認定

 常習性の認定は,①賭博の前科,②賭博を反復して行った事実のほか,③賭博の種類,④賭け金の額などの諸事情を考慮して決定されます(最判昭24・2・10,西田参照)。

 なお,判例は,それまで賭博行為をしたことのないプラスティック加工業者甲が「長期間営業を継続する意思で,多額(5200万円)の資金を投下して,多数(34台)の賭博遊技機を設置した遊技場の営業を開始し,警察による摘発を受けて廃業するまでの3日間,多数(延べ140人)の客と賭博した」という事案について,甲には賭博を反復・累行する習癖があると認められるとしています(最決昭54・10・26)。

   ※ 「賭博遊技機を設置した遊技場の営業を単純な営利の意図から譲り受けて短期間これを継続したにとどまるような場合,そのことから直ちに,当該営業者について賭博を反復・累行する習癖があるものと認定することは許されない」とする塚本裁判官の反対意見があります(同旨;大塚)。

     他方,大谷教授は,賭博の常習性は,肉体的・精神的・心理的依存性ばかりでなく,「賭博が容易にやめられない」という意味で経済活動上の依存性を含むと解すべきであるとして,多数意見が支持されるべきであるとされています(同旨;島田『アクチュアル刑法各論』,なお前田)。

       ⑵ 行 為

 本罪の行為は,「賭博」をすることです。その意義は,前条の解説を参照してください。

 なお,本罪における数個の賭博行為は,包括して一罪を構成します(最判昭26・4・10)。

       ⑶ 共犯関係

 ここでは,常習者と非常習者との共犯関係についてみておきます。

 ただ,この問題は,どうしても総論の「共犯」の理解が不可欠です。

 そこで,ここではとりあえず通説的な結論(本HPの立場)だけ明記しておきたいと思います。

 この点,常習賭博罪は,既述のとおり,加減的身分犯(不真正身分犯)と考えられます。

 それゆえ,「身分犯の共犯」に関する判例・通説を前提とすれば,「身分により特に刑の軽重があるときは,身分のない者には通常の刑を科する」と規定する65条2項が適用されることになります。

   * なお,同条項の「通常の刑を科する」との文言は,「通常の犯罪が成立して,その刑を科する」という意味であるとするのが現在の判例・通説です。

①常習者と非常習者が賭博をした場合

 まず,常習者甲と非常習者乙がいっしょに賭博行為をした場合,両名の罪責はどうなるでしょうか。

 この点,甲については,常習者である以上,常習賭博の罪責を問うべきです。

 他方,乙については,常習者の身分がない以上,常習賭博罪の成立を認めるべきではなく,(単純)賭博罪が成立するにとどまると解すべきです。

 そして,「2人以上の者が異なる構成要件にわたる行為を共同した場合,構成要件が重なり合う限度で共同正犯を認める」とする考え方(部分的犯罪共同説,最決平17・7・4参照)を前提とすれば,甲と乙には賭博罪の限度で共同正犯が成立し,甲には単独で常習賭博罪が成立するものと解されます(大谷,裁職研参照)。

②非常習者が常習者を教唆・幇助した場合

 では,非常習者乙が,常習者甲の賭博行為を教唆(幇助)した場合は,どうでしょう。

 この場合,正犯者である甲に常習賭博罪が成立することに問題はありません。

 これに対して,非常習者乙については,身分がない以上,常習賭博罪の共犯を成立させるべきではなく,65条2項により,賭博罪の教唆犯(従犯)が成立するものと解されます(大判大7・6・17,大谷・川端・前田・高橋・裁職研)。

③常習者が非常習者を教唆・幇助をした場合

 反対に,常習者甲が,非常習者乙の賭博行為を教唆(幇助)した場合は,どうでしょう。

 この場合,正犯者である乙には賭博罪が成立します。

 問題は甲についてですが,同人には身分がある以上,重い常習賭博罪の教唆犯(従犯)を認めてよいとするのが判例・通説です(大判大3・5・18,川端・前田・高橋・裁職研)。

   * 65条2項は「身分のない者には通常の刑を科する」としていますが,これは,不真正身分犯の共犯について,「身分のある者については身分に応じた犯罪の成立を認めて処罰する」とする趣旨にもとづくものであると考えます(川端)。

 

                                                               賭博場開張図利罪・博徒結合図利罪