カンボジア
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APSARA
 ”カンボジア”と言えば”アンコール・ワット”と答えが返ってくるほど、アンコール・ワットは有名になった。1992年に世界遺産に指定されて以来、観光客は増加の一途を辿り、今では年間100万人を超える人々が訪れる。近傍の町シェムリアップも観光都市として大きく変貌を遂げた(らしい)。巨大な飲食店や洒落た土産物屋、高級ホテルから格安のゲストハウスまで、様々な施設が立ち並び、建設ラッシュは今なお続いている。
 観光産業の発展はカンボジア経済に多大な恩恵をもたらしているが、それに伴い、いわゆる”観光圧力”も増大している。排出されるゴミの増加、観光タクシー等による大気汚染、むやみやたらな乱開発、跋扈する性産業に児童労働・・・・・・ 今回私たちがアンコール遺跡を訪れた目的の一つは、遺跡に対する観光圧力を体感することにあった。もちろん、観光そのものも十分に楽しみつつではあったのだが。(次のページに写真集があります)

 アンコール遺跡を管理している組織は、「APSARA(Authority for the Protection and Management of Angkor and the Region of Siem Reap)」である。日本名では”アンコール地域保全整備機関”という。1995年にカンボジア政府によって設立されたAPSARAは、観光開発局、都市計画局、人口統計開発局、遺跡考古学局など、様々な部局を抱えている。 
APSARAオフィスでの意見交換
第二局の面々
 アンコール・ワット、アンコール・トムを見学後、私たちはシェムリアップ市内のAPSARAオフィスを訪ね、遺跡考古学第二局の方々と簡単に意見交換を行った。第二局は遺跡周辺地域の調和・調整を図る部局であり、彼らが取り組んでいるモデル農村事業についての説明を受けた。

ポストカードやブレスレット等を手に、アンコール・ワット遺跡内の飲食店から出てくる観光客を待ち受ける子どもたち。
物売りの子どもたち
 アンコール遺跡を訪れたことのある方はご存知だろうが、遺跡には多くの物売りの子どもたちがいる。また、大人たちは露天をかまえてみやげ物や飲み物等を観光客相手に売っている。さらには、広大なアンコール遺跡の公園内には13万人が生活しており、燃料となる薪を勝手に伐採し、開拓し、ゴミを捨てる。これらの問題に対してAPSARAは、アンコール公園内にモデル農村をつくることで改善を図ろうとしている。APSARAの計画の概要は次のようなものである。

 まずセンターとなる施設をクメール伝統の様式で建て、その周辺に野菜畑をつくる。ただし、通常の農村とは異なり、つくる野菜はレタス、カリフラワー、にんじん、トマト等の西洋の野菜にする。というのは、シェムリアップ市内の高級ホテルやレストランでは、これらの野菜を海外からの輸入によってまかなっているからであり、需要が高いからである。さらに敷地の周囲には食用になる実や花をつける木々を植えて生垣とし、小枝は日々の薪ととして使用する。また、家の裏手には池をつくって魚を養殖する。そして、このようなモデル農家であるセンターを見て、西洋野菜の栽培方法や魚の養殖方法を学びたいという周辺住民には、APSARAが技術トレーニングを行う。
 これによって住民の生活が向上していけば、彼らは自らの土地を大事に思うだろうし、彼らの生計を成り立たせている遺跡についても、その重要性を理解し、保護に貢献するであろう。


 遺跡内に住んでいる人々に厳しい規制の網をかけたり強制排除したりせず、逆に生活向上策を講じることによってその土地に愛着心を持たせ、ひいては遺跡を尊重するように導いていこうするAPSARAの考え方は衝撃的だった。遺跡保護と観光産業の発展とを両立させることは難しい。しかし、遺跡の保護なくしては観光産業は成立しない。そして、それらを共存させる鍵となるのが地域住民の参画であり、参画の前提として彼らの生活の向上・安定を図る、という着想。
 他にも、観光客のマナー(露出の多い服装やゴミのポイ捨て、落書きなど)等、解決すべき問題はたしかにある。しかし、APSARAの方々であれば、必ずや素晴らしい対策を講じ、世界遺産アンコールを、その周辺に住む人々も含めて守っていけるであろうと確信している。
 

 最後に、これからアンコールに行かれる方々へお願いがあります。

・ アンコール・ワットは遺跡であると同時に、現在も使用されているお寺です。
・ 節度ある服装(袖が長めのTシャツ+膝丈くらいのハーフパンツが許容の限界です。もちろん胸元、肩、お腹、背中は隠れていなければなりません)でご見学下さい。
・ 2007年9月10日以降、アンコール・ワットには拝観順路が設定されました。混雑緩和のためですので、どうぞご協力ください。