小中学生将棋選手権長野県大会レポート!

平成22年5月2日(日)

松本市勤労者福祉センター

地区予選のレポートはこちら

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bkneko.gif長野県将棋界に久しぶりの女流中学生棋士対決!

大会前。湯浅事務局長から説明を受けています。

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bkneko.gif開会式。今回はスペシャルゲストとして勝又清和六段が来てくださいました!

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bkneko.gif勝又先生のご挨拶。

そして、飯島栄治六段からのお手紙を代読してくださいました。

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飯島先生のサイン本(升田幸三賞受賞記念!)とお手紙

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飯島先生の心温まるお手紙です。全文を紹介します。

 みなさんこんにちは 棋士の飯島です。

 今回私は 長野のほうへ行くことができませんので手紙でみんなに挨拶いたします。

 私はみんなの歳ぐらいからプロ棋士を目指して将棋を続けてきました。その中で一番大事に考えてきたことは 将棋を楽しく、集中して指して、努力を続けることです。

 自分の好きなことを続ける。そうすれば必ず夢がかなうと思います。

 また挨拶をしっかりして、駒や将棋盤を大切にする心を忘れないで続けていって欲しいと思います。

 私は 4月に升田幸三賞という将棋の世界ではとても有名な賞を受賞しました。

 昔、将棋の名人であった升田幸三名人にちなんだ大変素晴らしい賞です。

 今回この賞をとった飯島流引き角の本を20冊ほどみなさまに差し上げます。

 とても難しい本ですが楽しく、集中して、努力を続ければいつかみんなにも読める日が来ると思います。頑張ってください。

 私が長野に今度言ったときに、みんなと会えて将棋が出来たらうれしいです。いつも応援しています。

二〇一〇年四月 日本将棋連盟棋士 飯島栄治

bkneko.gif飯島先生、おめでとうございました!そして、心温まるお手紙、ありがとうございます!

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飯島栄治六段!
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「飯島流引き角」プロに定着 升田賞に飯島栄治六段(朝日新聞社)

升田幸三賞受賞記念「引き角くん」キャラクターマスコットデザイン大募集(ピエコデザイン)

(左)飯島流引き角戦法  

(右)新飯島流引き角戦法 

毎日コミュニケーションズより絶賛発売中!

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bkneko.gif対局開始。やっぱり一番注目したいのは中学生女子対決!

初めての県大会。初めての相手。一発勝負!

緊張で見ている私の手が震えます。

でも、女の子二人は堂々としたもの。さすが!女は度胸です!

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bkneko.gif小学生低学年の部。4名の代表者による総当たり戦。

小さいけれど各地域の代表だけあって、とてもしっかりシッカリした将棋だったと聞きました。

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bkneko.gif小学生高学年の部。勝又先生も熱心に観戦されています。

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bkneko.gif小学生高学年の部は各地区代表8名を4人ずつ分けて予選を行います。2勝通過2敗失格。

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bkneko.gif中学生の部。各地区の激戦を抜けた8名の戦士。

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bkneko.gif小学生低学年の子達も対局の合間にお兄さんたちを観戦。

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bkneko.gifついこの間まで小学生だった子がもう中学生!この時期の子どもたちの成長にただただびっくりするばかり!

将棋もひとまわり大きくなったことと思います。がんばって!

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bkneko.gif女子の部の対局が終わりました。

早速、勝又先生による感想戦&指導。プロの指導がじっくり受けてる、うれしはずかしラッキーガールズ!

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bkneko.gif中学生の部 2回戦。

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bkneko.gifMSG総統様が熱心に棋譜をとっていらっしゃるのは小学生高学年の部のようですね。

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bkneko.gif観戦に来た塩尻支部の先生方と学生さんたち。

やっぱり将棋で交流してます☆

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bkneko.gif県大会でおなじみの清水先生による詰将棋指導☆

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bkneko.gif対局後の感想戦。

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bkneko.gif坂口先生を中心に中信の先生方に加え、東信の川口先生も加わって、北信の選手を鍛えています!

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bkneko.gifこちらでも感想戦。

長野県の先生方は、地区を越えて子どもたちを熱心に指導してくださいます。

県大会は抜群の指導の場でもあります。

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bkneko.gif勝又先生の指導対局は子ども達がわんさと集まっての大盛況!

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bkneko.gifおとうさまがたも熱心に後ろから見ています。おとうさんも一緒に棋力アップ!

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bkneko.gif低学年のこどもたちによる慰安戦も行われました。

勝又先生が手にしているのは、子どもたちへのプレゼント「3手詰めハンドブック」(サイン入り!)

「この本を繰り返し読むと、強くなるよ。岩村田高校のお姉さんたちは表紙が見えなくなるくらい読み込んで、全国大会で大活躍をしたんですよ」と勝又先生。

本をいただいた子は目をきらきらさせて「はいっ!」と言って受け取ってました。

→岩村田高校のおねえさんたちの活躍はこちらから。

「岩の上のポニョ最後の大会」

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bkneko.gif中学生の部決勝トーナメント。振り駒に祈りを込めて。

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bkneko.gif小学生高学年の部決勝トーナメント。気合を入れて駒を並べます。

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bkneko.gif中学生の部で残念ながら予選通過しなかった選手に勝又先生が慰安戦を企画してくださいました。

優勝賞品は引き角の本!

bkneko.gif決勝トーナメントが行われている間に、なぜかレポーターは大学将棋の会場へ遊びに行ってしまいました(笑)

よろしかったら見てください。春季北信越大学生大会レポート

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bkneko.gif戻ってきたら、慰安戦も終盤になっていました。

丁寧にご指導くださる勝又先生。

見ている塩尻支部の先生方は、指導方法をお勉強されていることと思います。

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bkneko.gif小学生高学年の部、決勝戦。

北信対決です!

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bkneko.gif中学生の部決勝戦。こちらは中信VS東信。

「運命のライバル対決」

小学校時代からなぜか予選で当たってしまうくじ運が仲良しな二人。念願の決勝戦でお手合わせ!

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bkneko.gif中学生の部三位決定戦。

こちらは南信対決!南信の先輩がしっかり見てくださっています!

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bkneko.gif清水先生の愉快なご指導がまだまだ続いています。

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bkneko.gifこちらは上田の湯浅教室の雰囲気そのまま。

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bkneko.gif勝又先生のご指導もまだまだ続いています。それにしてもすごいパワー!

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bkneko.gif勝又先生のご指導を、主管支部の松本道場支部の内川先生も湯浅事務局長も吸い込まれるようにお聞きになっていらっしゃいました。

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bkneko.gif小学生高学年の部の決勝。この観戦者の数をみてください!

とてもレベルの高い戦いで、大人の先生方が目を丸くしていらっしゃいました。

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bkneko.gif中学生の部。千日手模様に一同ひやひや。そこから打開して対局はまだまだ続きます。

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bkneko.gif長かった対局が終わりました。

棋譜あわせをしている間も、熱気が冷めやりません。

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bkneko.gifそして、勝又先生のご指導はまだまだ続きます。

向こうで北信の北村先生が賞状の準備をはじめていらっしゃいます。

北村先生の達筆は 長野県将棋界でも有名!

書いていらっしゃるところの写真を撮りわすれてしまったのが残念!

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bkneko.gif小学生低学年の部 表彰式。

倉敷王将戦、がんばってください!

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bkneko.gif小学生高学年の部 表彰式。

倉敷王将戦、低学年の部も出場した選手。

高学年の部でもがんばってくださいね!

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bkneko.gif中学生女子の部。

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bkneko.gif2位の選手もうれしそう。

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bkneko.gif中学生の部。天童でもがんばります!

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bkneko.gif閉会式。勝又先生のご挨拶。

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bkneko.gif 勝又先生は、長野の子どもたちの対局がとてもレベルが高かったことを驚いていらっしゃいました。

 これも地元の先生方による熱心な普及活動、連合会によるバックアップがあってこそだと思います。

 子ども達が大事に守られて、安心できる環境でのびのびと将棋を指すことが出来ていることに、改めて感謝!

 またそんな長野県全体を、勝又先生、飯島先生はじめたくさんのプロ棋士の先生方も見守ってくださっていることに感謝しています。

 代表選手の皆さんは全国大会で頑張ってください。

 そしてこの大会に予選から参加されたみなさんも、飯島先生からのお手紙にあったとおり 将棋を楽しんでいって欲しいと思います。

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hanekoma-pa.gif勝又先生と飯島先生に会える!窪田空穂将棋教室レポート

2010年の小中学生選手権を振り返って

MSG総統

msg-odoroku.gif先日行なわれた「小中学生選手権」私も少年達の高レベルの熱い熱闘に魅入られました。そこでテツ母様からの御依頼もありましたので、今回は観戦記という形で振り返りたいと思います。
小中学生の部を観戦記という形で振り返るのは3年振りである。という事は、その時の小学6年生が、今や中学3年生になっているのである。

この3年間の間、学生達を取り巻く環境・状況は、彼等の成長と共に大きな変化をもたらした。将棋を続けて更に腕を上げた者、違う環境に身を置く者と、人によって様々である。そして経験を重ねていく内に力の差が拮抗し、もしくは新たに将棋を習い始める子が出て来た事によってライバルの数が増えた事もである。これによって今回の大会は大人顔負けの熱戦が続出したと言っても過言ではないであろう。

今回は、それらの要素を頭に入れつつ対局の行方を私なりに分析しながら小中学生選手権を振り返りたいと思います。
msg-odoroku.gif今回の小中学生選手権における大きな出来事、それは女子代表選手を決戦によって選出する事、つまり女子の地区代表選手が複数登場した事であろう。それは中学生の部で実現した。南信から中村早希さん、東信から中山瑠璃さんの2名である。

中学生名人戦は、男子のみならず女子の部も設けられており、これまでも長野県から女子の代表が送り出された例はあった。だが複数の地区代表が登場したのは(少なくても平成に入ってからは・・・)初めての事であった。

これまでは高校に入ってから将棋部の方達や友人の勧誘によって将棋部に入部し、これがキッカケで始めて将棋に触れる機会を得るというパターンが多かった。

だが最近は、学生大会で活躍した兄もしくは姉の影響で妹が将棋に持ち、大会に積極的に参加して活躍する事が多くなり、その活躍に刺激されて女性選手の台頭が次第に進行していく。取り分け小学生選手で何人かの女子選手が登場してきた。こうした女性選手の人口増加という好影響は、いよいよ中学生にまで波及して今回の「長野県女子中学生名人戦」の実現に繋がったと言えるであろう。

さて今回の女子中学生名人戦に臨む2人の選手についてだが南信代表の中村早希さんは辰野中の1年生、かつての長野県中学生名人であり、最近では高校団体戦において伊那北高校の復活優勝の立役者となった中村祐貴君の妹である。彼女もまた兄の影響で将棋を親しむようになり、小学生時代から大会に参加して腕を磨いていた。いや大会のみならず「石川・勝又教室」や「詰め将棋選手権」にも顔を出すという、正に兄譲りとも言える積極ぶりである。

一方、中山瑠璃さんは佐久市、浅間中2年。私は彼女について多くの事を知っているわけでは無いが、今回の東信予選では男子に交じって4勝を挙げて勝ち越しを決めたというから、かなりの腕前である。無理な理屈かもしれないが佐久東中並の実力。つまり団体戦で県代表を狙えるだけの実力を持たないと男子といえど彼女の上に立つのは困難な程の実力が必要という事なのであろうか?

彼女について私が注目しているのは、彼女が通学する浅間中学校が、同じ県道に沿っている、あの岩村田高校と隣近所といっても良いくらいの近距離に位置している事である。岩村田高校との関わりの有無も知りたいものである。

代表決定戦は出場選手が2名という事と、主管の松本道場支部が、たまに番勝負を取り入れることもあるので対戦形式が注目深かったが、結局1番勝負で決着をつけることになった。
msg-odoroku.gif私が女子代表決定戦を見始めたときは既に終盤であった。形勢は駒得の中山さんの優勢だと思っていたが中村さんの攻め駒も、かなり相手玉に肉迫していたので、まだまだ予断の許されない状況であった。

中村さんには最後のチャンスが訪れようとしていた。勝ち筋を懸命に捜す中村さんであったが、残念ながら勝負手を見つける事は出来なかった。際どい終盤戦であったが、この最後の逸機で差が開き、中山さんが優勝を決めたのであった。

見事優勝を決めた中山さんは、まだ2年生という事で将来まだまだ伸びるだろうし大きな戦いを幾度も経験するであろう。そして1年生の中村さんならば尚更である。中山さんの全国大会での活躍のみならず2人の今後の競争、そして更に多くの女性選手の参加に期待したい所と思う。


その頃、小学生低学年の部が佳境を迎えようとしていた。その代表4名は次の通りである。

中信:丸山颯斗 南信:鈴木拓弥 東信:西田 新 北信:内藤武義

結局この部を制したのは西田君であった。それにしても東信地区の小学生は早い内から頭角を現す選手を何人も見る。小山源樹君然り、中沢良輔君然り。今回2度目の県大会登場となった前山倫太郎君も4年生である。小山君や中沢君の急成長には目を見張るモノがある。これに前山君や西田君にも是非続いてもらいたいと思っている。尚、個人的には中信代表の丸山君が、まだ2年生という事で、来年に大きな期待を寄せたいと思う。
msg-odoroku.gif当初から大人顔負けの激戦が予想された小中学生の戦いであったが、その幕開けからして凄まじい攻防戦が両部門で展開された。岡沢VS寺沢戦(小学生高学年の部)と小山源VS西川戦(中学生の部)である。

両局の共通点は最初こそ矢倉模様だったものの先手番を握った方(この場合は寺沢君と西川君)が玉の囲いをそこそこに済ませ攻撃重視の布陣を敷いた事であった。寺沢君にしろ西川君にしろ王様を6九に寄せただけで早々と右四間腰掛銀を急いだ事、後手の岡沢君と小山源君が相手の飛車を4七に釣り上げて応戦した事である。

岡澤VS寺沢戦は最初は寺沢君が猛攻を重ねたのに対し、岡沢君が間接的に王手飛車を決めた後の厳しい反撃を見せてギリギリの寄せ合いとなったが、自陣に引き上げた寺沢君の竜を巡る対応が波乱を呼ぶ。岡沢陣に突進してきた寺沢君の銀の処理を後回しにして、この自陣竜を金で取って必至をかけた岡沢君であったが、これが危険な一手であった。実は前述の銀の突進は詰めろだったのである。

詰ますしか勝ち目の無い寺沢君の王手ラッシュが始まった。だが秒読みのせいもあってか惜しくも即詰みを逃がしてしまった。懸命の追撃は長らく続いたが、どうしても1枚足りずに岡沢君の大逆転勝利が決まったのであった。

一方、西川君の先制攻撃も厳しく、小山君も苦心の大長考を重ねる事になる。開戦したのが40手目から50手目に至るまでに小山君は持ち時間を20分も費やした。

この大会の持ち時間は30分(秒読み30秒)4五歩と仕掛けられた時と隠忍自重的な自陣桂を打った時だけでも、それぞれ5分費やしている。最も西川君も駒得を果してからの5手に15分使っている。強い者同士の戦いにおいて中盤に惜しげもなく時間を使う光景には慣れっこである私だが、いやそれだけに、こうした緊迫した中盤の攻防を目の当たりにする事によって少年棋士達の実力の高さを思い知らされるのである。

西川君が押し気味に進める展開となった戦いであったが、私の独善で勝負のポイントを挙げるとするならば、両者の王様の位置であったか?

防戦の最中に王様を3一から2一に寄せた小山君に対し、王様を6九に置いたまま攻撃を続行した西川君。その姿勢は小山君が5七歩と垂らした時も変わらなかった。だが小山君が5八銀の王手飛車を皮切りに反撃を開始して西川君の王様を4七にまで炙り出した辺りから状況が一変する。西川君の王様が左辺への移動をする間に飛車を打ち込み、更に8筋からの雀刺し的な攻撃態勢を構築した事によって挟撃形を作った小山君が一気に寄せ切ったのである。

結果的に攻撃重視策を用いた先手側が敗れた格好になったが、これをして単に王様の位置云々を敗因に挙げるのは早計であろう。これ自体は、それ程目新しい事でもなく10年程前の中学選手権でも私は、このような戦いを見届けており、しかもその時は先手6九玉形の方がワザと王手飛車を掛けさせ、それによって得た手得を生かして後手玉に必至をかけ、王手の王手ラッシュを凌いで勝利を納めている。

感想戦では王手飛車を掛けさせた点と、後手の厳しい王手ラッシュを主に高段者の方々が懸命に後手の勝ち筋を捜したが、ついに発見する事はなかったのである。

重視するのは王様の安泰か?攻撃態勢の急務か?それは本人次第である事は言うまでも無いが、大きな戦いで、このようなギリギリの戦いに踏み込む事こそが尚一層の棋力向上が望まれるのではないだろうか?

そしてこの2局以上のサプライズが中学生の部で生じる。新1年生の小山祥君が白井君を破ったのである。これまでなかなか先輩選手に勝てずにいた小山祥君であったが大人の大会でも相当の実績を重ね続ける学生選手に勝てるまでに成長したのには恐れ入った。これも本人の努力の賜物であろう。

開幕戦から波乱含みとなった小中学生選手権。そして2戦目以降更に激しさを増すのであった。

msg-odoroku.gif中学生男子&小学生高学年の部は2戦目を迎えた。

私が張り付いたのは中沢VS相馬戦である。優勝候補筆頭と信じる選手と地元中信地区代表の対決となれば興味をそそらずにはいられまい。

先手番を握った相馬君に対し中沢君は相矢倉で対抗。相馬君は途中までは着々と陣形を整えていたが、仕掛けのタイミングを掴めない内に中沢君に出鼻を挫かれ、ペースを乱したまま敗れてしまったのが何とも勿体無かった。中沢君は終盤の寄せも鮮やかに予選通過を決めた。

中沢戦こそ力を発揮する前に差をつけられ敗れた相馬君であったが3戦目の下原戦では力強い指し回しで堂々たる勝利を納めた。筑摩小学校のエースでもある相馬君にとって自身の決勝進出を、団体戦のライバルを倒して決めた事で、大変有意義な勝利であったと思う。

もう一方のブロックでは岡澤君が2連勝。寺沢君が2勝1敗で予選通過を決めた。ここには冬の小学生名人戦に続いて中信代表になった中村君がいたが、その時と同じく最初こそ勢い良く攻め込むものの、後が続かず逆襲を喰らって苦汁を舐めるというパターンで無念の予選敗退となった。中信予選の必勝パターンが県大会では通用せず、レベルの違いを痛感させられたという所か?

中学生高学年の部において私が注目したのは小山祥平君であった。初戦で優勝候補の白井君を破り良いムードで2戦目の熊谷戦を迎えた。実力的にも互角と見ていたので勢いのある祥平君にチャンスアリと思っていたが、熊谷君が先輩の意地を見せて勝利を納めた。これに予選最終局にて祥平君に雪辱を果した白井君が続いた。

もう1つのブロックは小山源樹が2連勝で一抜け。続いて西川君が最後で柴本君を振り切って1年生で唯一決勝トーナメント進出を果した。

こうして各部門の決勝トーナメント進出者が決まり準決勝の組み合わせは次の通りとなった。

・小学生高学年の部
中沢良輔VS寺沢凌 岡澤涼VS相馬崇史

・中学生男子の部
小山源樹VS白井貴浩 熊谷慧VS西川洸佑
msg-odoroku.gifこの大会にはスペシャルゲストが来場していた。プロ棋士の勝又清和六段である。これだけでもビッグサプライズなのだが、その勝又先生が、更に大きな朗報を報告する。

その朗報とは、勝又先生同様、長野県中の子供達を熱心に指導してくれる飯島栄治六段が「升田幸三賞」を受賞したという事であった。開会式にて勝又先生から飯島先生の喜びと感謝の念が込められた手紙が読まれたのである。長野県に馴染みの深いプロ棋士の快挙は喜ばしい限りである。

飯島先生の受賞の決め手となった「飯島流引き角戦法」だが私流に言わせると角道を明けずに急戦を目指す鳥刺戦法に左美濃の堅陣をミックスさせた、言わば守りの固さと攻撃力の強さを兼ね備えた振飛車破りの戦法と言うべきか?

これ以外に@いかなる振り飛車に対しても自分の得意範囲で戦える A左美濃でも充分な堅陣だが穴熊に組替える事も可能 B居玉でも意外と防御力が高い などが長所として挙げられる。正に新感覚の戦法であり、升田賞の受賞も充分納得が行く。

長野県のアマ棋士でも小林隼貴先生が、これを駆使して信州王将獲得、高校竜王戦準優勝という見事な成績を収めた。皆様も是非「飯島流引き角戦法」という本を読み実戦で使って欲しい。

勝又先生も子供達の熱戦を食い入るように見入り感想戦では的確なアドバイスを送っていた。師匠の石田先生も解説名人として知られたA級棋士であったが、勝又先生のそれも師匠に負けてはいない。指導対局も、物凄く熱心で、更には予選敗退者の為に「慰安戦」を企画してくれた。いつもながら頭が下がる思いである。

指導対局と言えば県内各地からアマ強豪が集った事もあり、こちらの指導ぶりもテンションが高い。先生によってそれぞれ特徴は違えども、子供達への愛情と教え上手ぶりと情熱の高さは、皆同じである。

我が塩尻支部からも坂口、松本、赤木の各先生のコーチぶりも熱かった。この3氏は学生大会がある度に来場して子供達に指導を施していた。中でも坂口先生は運営面でも正しい礼儀作法や対局の心得といった将棋だけでなく人生に必要不可欠な教えを伝えていた。

こうした事の積み重ねが将棋を通じて立派な人間を多く作り出していくのだなと思い、信じたいと説に願う私であった
msg-odoroku.gifいよいよ決勝トーナメントを迎えた小中学生選手権。各クラスの準決勝の組み合わせを改めて御紹介しよう。

・小中学生高学年の部:中沢良輔VS寺沢凌 岡澤涼VS相馬崇史
・中学生男子の部:熊谷慧VS西川洸佑 小山源樹VS白井貴浩

見事なまでに4地区の選手が決勝トーナメントに進出した小学生の部であるが、まず決勝進出を決めたのは岡澤君であった。相馬君も永明の俊英、下原君を破って勝ち上がってきたのだが、残念ながら、ここで力尽きた。

中沢VS寺沢戦は壮絶な攻防となった。前回の同大会では寺沢君が激しく攻め立て中沢君が頑強な防御を見せると言う展開であった。今回も同様の戦い模様となったが、寺沢君の攻撃力が遥かに増した為、大激戦となった。

予選の岡澤戦でも厳しい攻めで必勝形まで進めた寺沢君の攻めが功を奏すかに見えたが、中沢陣に睨みを聞かせていた中段の銀を飛車と刺し違えたのが、どうだったかというのが私の感想である。取れる飛車を敢えて取らずに、その飛車の頭に歩を叩いていれば、中沢玉の上部脱出は困難を極め、寺沢君有望な展開になっていたかもしれない。

本譜は楔となる筈の銀を王様で取り除いた事で、自然に上部が開拓された形となって中沢君が辛うじて逃げ切った。これによって決勝戦は中沢VS岡澤という、冬の名人戦と同一カードとなった。

msg-odoroku.gif一方、中学生の部は両局共に激しい戦いになったようである。

熊谷VS西川戦は中飛車VS急戦ならではの激戦となり、西川君が角切りから飛車を成り込むと熊谷君は駒得と軽い捌きで西川陣を攻め立てる。終盤は両者ギリギリの寄せ合いを展開して、どちらに流れが転び込むのか分らない展開となったがハイライトは、西川君の竜の利き筋に打ち据えた熊谷君の角打ちであった。

角の犠牲も辞さずの攻防手で、これを打たずに竜切りから必至を掛けたい所であるが、飛車を渡すと熊谷玉は即詰みという事で決断の一手であった。そしてこの角を竜で取ったのが西川君にとって痛恨の一着になってしまった。取らずに上部への逃げ道を作っておけば、西川君の方が有望だったと私は思うのだが・・・

本譜は竜の利きを自陣から逸らせた事で、飛車切りからの必至が掛り、熊谷君が決勝進出を決めた。何のかんの言っても飛車角を連続に捨てての寄せは豪快である。

その一方では小山君と白井君が、これまた壮絶な攻防を繰り広げていたようである。勝又先生等、多くのギャラリーが戦況を見つめる中、最後に勝ち切ったのは小山君であった。白井君の側にも勝機があったようであるが、小山君の集中力が僅かに上回ったか?

こうして中学生の部の決勝は熊谷VS小山戦となったのである。
msg-odoroku.gif小学生高学年の部の決勝カードとなった中沢VS岡澤戦。これは3ヶ月程前の小学生名人戦と同一カードであった。この時は中沢君が先手番となり相矢倉模様から早い段階の内に戦いが始まったが、玉頭を制圧した中沢君が、その後も緩む事なく攻め切って勝利を収めている。

そして今回も中沢君が先手を握っての相矢倉戦となり、前回に比べればジックだったものの攻め合い自体は、その時よりも激しかったように思う。それでも先手番だった事もあってか中沢君の攻め足は速く、駒損ではあったが、5三の地点に、と金を作って食い付いた場面では、金矢倉の堅陣も健在な事もあって中沢君の優勢かと思われた。

だが岡澤君も逆転の布石を、あちらこちらに打っていく。まず相手の金矢倉の要の7八金を消し去り玉頭にも傷を付ける。更に飛車の封じ込める事で、相手の攻撃を低下させる。こうする事によって一見ソッポにいると思われた2五の金が思った以上の強力な守備駒と化したのであった。

そして懸命の防戦の最中に詰めろを防ぐ為に投入された下段香が本局の命運を根底から覆す香打ちとなった。この香車は、ただ単に安い駒で凌ぐ為だけの駒ではなかったのである。

中沢君の猛攻は凄まじくギリギリで耐え抜いてはいるものの岡澤陣は風前の灯火であった。そしていよいよ飛車が飛び出した時、奇跡の時が訪れたのであった。

msg-odoroku.gif岡澤君の手から放たれた起死回生の一手は、中沢君の王様の頭に打ち込まれたタダ捨ての銀打ちであった。同玉の一手に王手飛車の角打ちが勝負を決する攻防の一着となった。この角は、金取りにもなっている上に、真下にいる味方の香車までも活性化させた詰めろ逃れの名角であった。

本来なら中央に逃げたいし、実際中央への脱出を試みれば詰みはなかったであろうが、中央に達した途端に角で金を取った手が空き王手となり、飛車を取った手が詰めろとなるという仕組みになっているのである。中沢君は止むを得ず端からの上部脱出を試みたが、岡澤君は乱れる事無く即詰みに討ち取り5年生にして長野県の小学生の頂点に立ったのであった。

私も岡澤君が勝ったと聞かされた時は目も耳も疑ったものである。中沢君が先手番だという事は知っていたし、チラッと見た感じでは攻めが好調のように思われたからである。実際間近で見ていた人達も中沢君が勝つと思っていたようだ。

だが後で棋譜を並べてみると逆転に導く数々の火種が数多く燻っていた事は確かであった。中盤での懸命の手作りと反撃を見据えた防戦手法が、岡澤君自身でさえもビックリの逆転優勝につながったと思う。最後まで諦めずベストを尽せば、必ずチャンスは訪れると言う典型例となった一局であった。

中沢君としては残念な結末であった。私も彼には全国大会で活躍を期待していたので、ここでの敗退は他人事にも関わらず口惜しい。どの手を選んでも勝てそうな将棋であったが、やはり自陣に生じた誤算が最後の攻撃の際に微妙な影響をもたらしたのだろうか?

だが悔しい敗局であれど恥ずべき敗北ではない。一手の緩みを許さず積極的に踏み込んで早い攻め足を披露した姿勢と技量は、これからに向けて大きな武器となるであろう。まだまだグングン伸びる逸材である事に変りはないので、誰よりも大きく成長する事であろう。

その頃、中学生男子の部の決勝も熱戦の中、難解な混戦が繰り広げられていた。
msg-odoroku.gif決勝戦と同時に進行していた3位決定戦では小学生では寺沢君が相馬君を、中学生では白井君が西川君を破り、両部門共に南信勢が3位を確保した。

寺沢君と相馬君は、後日の小中学校団体戦の地区代表として県大会に登場。両者の再戦はなかったようで、結局寺沢君が大将を務めた永明小学校が3連覇を達成する。寺沢君には団体戦の本大会での活躍は勿論、中学生となる来年は、もっと飛躍的な成長を期待せずにはいられない。彼にはもっと大きな期待を寄せても良いと思う。白井君も来年は高校生という事で活躍の度合のみならず、その去就にも注目させられるであろう。

さて中学生の頂点を決める戦いは、因縁深い一戦となった。

熊谷君と小山君。この2人は親友かつ宿敵という言葉だけでは片付けられない程に大きな関わりを持っていた。

小山君にとって熊谷君は最初に現れた壁と言える存在で、2年生の時に初めて出場した小学生名人戦の県大会で当たった相手が熊谷君であった。その翌年には再び初戦で当たり、前回に続いて勝利を納めた熊谷君が、そのまま快進撃を重ねて小学生名人になっている。

これを皮切りに都市対抗戦、支部対抗戦、更にはテレビ松本杯(この対局はテレビで中継された)の決勝戦と、幾多の大会で激闘を繰り広げできたのである。そして今回は中学生名人を決める戦いにて両雄は激突したのである。

試合は予想通り急戦VS振飛車となり、飛車交換が生じる程の激しい戦いとなったが、熊谷君に誤算があったのか小山君の攻めが厳しさを増す。とは言え駒得の熊谷君も角の威力をバックに、と金で小山陣を脅かす。グズグズしてはいられないと見たのか小山君は竜の力を頼みにカナ駒で熊谷君の本陣に食い付く。

そんな感じで小山君の厳しさと熊谷君のしぶとさが発揮し合ったが為に思わぬ事態が生じ、決勝戦は混迷の度を深めていったのであった
msg-odoroku.gif熊谷君の、と金を放置して2枚飛車で熊谷陣攻略を狙う小山君。これに対し熊谷君は端への角打による斜め田楽刺しで応戦。竜切りを強要させと後、と金で銀を剥す。小山君は、これを普通に取り除いていては、取られた銀を守りに補強されてしまうと、攻撃が困難になると判断したのか、王様のガードが銀1枚の熊谷陣に対して竜の威力を頼りに金を引っ掛け食い付いた。

熊谷君は攻め合いでは勝てないと見たか、攻防の拠点に角を王手で打ち込んだ後、銀を自陣に投入して本陣死守の態勢を築く。以下、双方共にカナ駒を打ち合う展開になり千日手模様となっていった。同一局面が何度も繰り返された後、小山君が1度打開を試みるが、熊谷君の自陣飛車を打ち込んで頑強な抵抗を見せた後、再び千日手の様相を呈してきた。

しばらく同一局面が進んだ後、審判の1人が千日手の宣告をしようとしたが、別の審判が、もう少し様子を見るべきと判断して対局は続行される。

そして小山君が再度打開して強攻を敢行。これが功を奏し熊谷陣を壊滅させる。最後は一見ボンヤリした角成が詰めろというシブイ技で熊谷君に引導を渡し、見事中学生名人の座を射止めたのであった。

msg-odoroku.gifこうして2010年の小中学生選手権の幕が閉じた。優勝又は代表となった選手を改めて御紹介しよう。

小学生低学年の部:西田新
小学生高学年の部:岡澤涼
中学生女子の部:中山瑠璃(ただし都合により出場せず、代役出場は中村早希)
中学生男子の部:小山源樹

全国大会は小中学生いずれも8月に開催される。代表選手の活躍に期待したいと思う。

長野県はここ数年で多くの有望選手を輩出し、尚且つ全国大会での活躍が目立ちつつある。

支部対抗戦では長野安茂里支部の優勝を、塩尻支部の準優勝を果たし。高校棋戦では新人戦で長野県代表選手が2名ベスト4、この内の1人が全国制覇。団体戦では女子の部で準優勝。選手権では二度も上位入賞(2位、3位)を果した選手もいる。そして小中学生団体戦では3年連続ベスト4までに進出した強力チームが登場し、その内の1人が奨励会員となった。そしてプロ棋士も誕生して現在も活躍中である。

これらの活躍は、ここ10年間に長野県の選手が成し遂げた事である。これらの快挙をやってのけた選手達の今後更なる活躍が期待されると同時に、これに続く者が1人でも多く出てくる選手が台頭してくれる事を期待したいし、また期待通りの活躍をしてくれるであろうと信じている。

最後に今回の大会に参加した全学生選手に次の言葉を贈る事で終筆したいと思う。

「小中学生選手権が終っても本当の競走は今始まったばかりである」

(完)