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* 2 * 「バカな!! 採掘量を20%も増やせだと!?」 若いビーストの男が声を荒げる。 ビストニア鉱山の採掘場へと続く坑道内に作られた小さな建物。 普段は坑夫たちの休憩場として使われている場所なのだが、 今は休憩ではなく集会が行われている。 この辺り一帯の採掘場を管理する会社から通達が来たのだ。 採掘量を従来の20%増やすように。と。 その会社を運営しているのはヒューマンだ。 「俺たちに休むな!と 寝るな! というのか!?」 再び声を荒げる。 集会に集まった坑夫たちが誰1人として諌めようとしないのは、 全員が同じ想いだからだ。 「・・・確かに、そうだ。」 口を開いたのは、唯1人集まった坑夫たちと向かい合っている、 この採掘場の現場責任者だ。 もちろん、彼もビーストである。 名をバージニア・オウル・ロ−レンツという。 坑夫仲間からは『バーニィ』と呼ばれている。 30代前半の働き盛りといった歳だが、 現場責任者を任された。 彼が特に何かをしたというわけではなく、 口うるさく反論しないビーストなら誰でも良かったのだ。 反論した前任者たちは、全員別の採掘場へ移されている。 ただ単に、順番が回ってきただけ。 その順番さえも、なんとなくつけただけのものでしかない。 「『そうだ。』ってお前!!」 「俺もそう言ったんだが、 『寝たり休んだりしたければ、 その間は女子供老人を働かせるだけだ』 と言ってきた。」 「...な!?」 「反抗すれば、別の採掘場へ移される。 これ以上、ここの労働力を減らすことは 自分たちの首を絞めるだけだ」 「・・・。」 別の採掘場。 今まで誰も言及はしていないが、 おそらく全員が死んでいる。 ヒューマンは、ビーストたちを単なる労働力としか考えていない。 幾らでも補充できる消耗品なのだ。 彼は続けた。 「俺たちに自由はないんだ。」 ― 1ヵ月後 ― 「さらに20%増やせだと!?」 バーニィは無言で頷く。 それが、彼の精一杯だった。 先月分の採掘ノルマをギリギリでクリアし、 その報告と確認を行った際に通達されたのだ。 「巨大な鉱脈が見つかったらしい・・・」 バーニィの声は酷く弱々しい。 他社と競争するためには量で勝負するしかないとの判断だ。 「・・・やるしか、ない。」 集会場は重い空気に包まれ、 1人、また1人と力なく立ち上がり、 集会場を出て行った。 バーニィは最後の1人の背中を見送ると 己の非力を嘆き、泣いた。 その場の誰も、彼を責めることができないことは分かっていた。 例え誰であっても、何も変わりはしないのだ。 |