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「バカな!! 採掘量を20%も増やせだと!?」

若いビーストの男が声を荒げる。

ビストニア鉱山の採掘場へと続く坑道内に作られた小さな建物。
普段は坑夫たちの休憩場として使われている場所なのだが、
今は休憩ではなく集会が行われている。

この辺り一帯の採掘場を管理する会社から通達が来たのだ。
採掘量を従来の20%増やすように。と。

その会社を運営しているのはヒューマンだ。

「俺たちに休むな!と 寝るな! というのか!?」

再び声を荒げる。
集会に集まった坑夫たちが誰1人として諌めようとしないのは、
全員が同じ想いだからだ。


「・・・確かに、そうだ。」


口を開いたのは、唯1人集まった坑夫たちと向かい合っている、
この採掘場の現場責任者だ。

もちろん、彼もビーストである。


名をバージニア・オウル・ロ−レンツという。
坑夫仲間からは『バーニィ』と呼ばれている。

30代前半の働き盛りといった歳だが、
現場責任者を任された。
彼が特に何かをしたというわけではなく、
口うるさく反論しないビーストなら誰でも良かったのだ。
反論した前任者たちは、全員別の採掘場へ移されている。

ただ単に、順番が回ってきただけ。
その順番さえも、なんとなくつけただけのものでしかない。


「『そうだ。』ってお前!!」


「俺もそう言ったんだが、
 『寝たり休んだりしたければ、
  その間は女子供老人を働かせるだけだ』
 と言ってきた。」


「...な!?」


「反抗すれば、別の採掘場へ移される。
 これ以上、ここの労働力を減らすことは
 自分たちの首を絞めるだけだ」

「・・・。」


別の採掘場。
今まで誰も言及はしていないが、
おそらく全員が死んでいる。
ヒューマンは、ビーストたちを単なる労働力としか考えていない。
幾らでも補充できる消耗品なのだ。


彼は続けた。

「俺たちに自由はないんだ。」
 



 ― 1ヵ月後 ―


「さらに20%増やせだと!?」

バーニィは無言で頷く。
それが、彼の精一杯だった。

先月分の採掘ノルマをギリギリでクリアし、
その報告と確認を行った際に通達されたのだ。

「巨大な鉱脈が見つかったらしい・・・」

バーニィの声は酷く弱々しい。

他社と競争するためには量で勝負するしかないとの判断だ。

「・・・やるしか、ない。」

集会場は重い空気に包まれ、
1人、また1人と力なく立ち上がり、
集会場を出て行った。

バーニィは最後の1人の背中を見送ると
己の非力を嘆き、泣いた。

その場の誰も、彼を責めることができないことは分かっていた。
例え誰であっても、何も変わりはしないのだ。




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