* 9 *


 3日後。


バーニィは医療カプセルから出て、ベッドに横たわっていた。
ベッドの脇にはアーツとバッセがいる。

「左腕は復元できなかった。
 ナノブラストは二度とできなくなってしまった。
 すまない―。」

カプセルから出て、意識を取り戻したバーニィが最初に聞いた言葉だ。

バーニィは左腕の肘と手首の中間辺りから先を失っていた。
今はバイオ溶液を満たしたギブスで覆っている。

あの日の坑道が襲撃されたときから、
今の今までの顛末をアーツから説明されている最中だ。

バーニィの考えた通り、襲撃は証拠隠滅のため、
他の企業に再利用させないため。

ただそのために、バーニィたちをその家族もろとも生き埋めにしたのだ。

アーツとバッセの2人は、落盤事故の件で登録を抹消されており、
仕事に復帰することは許されなかった。
もともと専属の護衛ではなく、雇われただけの身だったため、
すでに代わりの護衛が雇われていた。
分かりやすく言えば、クビになったということだ。

そして、生き埋めにするという計画を知り、
急いで助けにきたのだという。

アーツはこう付け加えた。

「キャストが恩知らずだと思われては困るからな。」

生き残っていたのは、ほんの数名。

地上部隊に撃たれはしたが、急所が外れていた者、
ビースト持ち前の生命力の高さで生き延びた者、
運良く岩石の下敷きにならなかった者と様々だ。

そして今居るこの場所について。


第3惑星モトゥブの衛星軌道上には、
サテライトベルトと呼ばれる小惑星帯が存在する。

その小惑星のうちの1つを改造した宇宙ステーション。
俗っぽい言い方をすれば、アジト・秘密基地と言ったところだろうか。

艦船の航行が非常に困難なため、危険を冒してやってくる船は少ない。

以前、アーツたちが手掛けた仕事で、
海賊を捕まえたときに見つけたのだという。

死んだことになっているビーストたちを匿うのには、
うってつけの場所だといえる。

その日、バーニィは生まれて初めて自分の生まれた星を見た。
600年前の、民族戦争が始まる前の惑星モトゥブ。


その姿は、鮮やかな緑色だった。





それから一ヶ月、2人のキャストに助けられたビーストたちは、
ありとあらゆる知識を吸収した。

パルム・ニューデイスの情勢、
艦船の操り方、フォトン工学の基礎、
武器や銃器の扱い方といったものだ。

坑夫として奴隷のごとく働くの嫌ったビーストたちは
様々な手段を使って艦船や武器を手にいれ、
海賊としてヒューマンを主な対象にモトゥブを荒らしまわっていた。

ヒューマンは、彼らをローグス(ならず者)と呼んだ。

バーニィたちもローグスとなることを選んだ。
目的は金銭ではない。
ヒューマンたちの非道な振る舞いを許さないために、だ。

バーニィたちローグスのメンバーには、
キャストであるアーツとバッセも含まれていた。
彼らにもいろいろと思うところはあったようだが、
なかば押し切る形でバーニィがムリヤリ頼み込んだのだ。

だが、アーツもバッセも、リーダーになることは頑なに拒んだ。

「ビーストたちはワタシたちの言うことには従わないだろう。
 バーニィ、お前がリーダーを務めるんだ。」

2人を除けば皆ビーストで構成されている以上、
キャストらしい合理的な判断だといえた。



「オレは、確かにヒューマンの行いは許せない。
 だけどさ、やり返したら、さらにやり返されるもんだ。
 だから、
 ビーストも、キャストも、ニューマンもヒューマンもない、
 誰もが平等に、お互いの長所を活かして、助け合っていける。
 そんな世界にしたい。」

バーニィは、いつからかそんなことを言うようになった。

「そんな世界になる確率は、計上することもできない。
 それでもお前はそう言うのか?」

アーツは肯定するでも否定するでもなく、
また、賛同するでも反対するでもなく、
単純に、そして客観的にそう聞いた。

「できるさ。確率や可能性なんて問題じゃない。
 オレとアーツがそうなったように。
 誰もが同じ様に出来るはずさ。」

恥じることも無く言い放ったバーニィの目には、
一片の曇りもない。
何処までも真っ直ぐ。


「それを【フリーダム】という。
 自分が求めるものぐらい、知っておけよ。
 これだからビーストは下位種族だというのだ。」

アーツは笑っていた。


そうして、バーニィ一家が誕生した。




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