★僕が顔面神経痛になった理由★

 2000年4月28日(金)、夜突然顔の左側半分に激痛が走りました。(たとえ
れば奥歯が5本位一度に虫歯になった様な痛みかな。)
 とりあえず頭痛薬を飲んで眠ろうとしましたが、全く痛みがとれず、ひたす
ら不眠絶食状態で忍耐する生活が2日間続きました。しばらくすれば良くなる
だろうと軽く考えていましたが、まったく治らず、たまらなくなって月曜日の
朝神経科の病院に行きました。するとすぐに「顔面神経痛」もしくは「三叉神
経痛」であると診断され、よく効く薬をくれました。

 さて、そんな病気にどうしてなったかというと、2つの原因があります。
 1つは、会社の同僚が首にヘルニアができて長期休暇をとったために、彼の
分の仕事も自分にまわって来てしまった、ということ。おかげで、一日おきに
会社に泊まり込んで仕事をするはめになりました。
 しかし、この原因は肉体的なもので、もう一つ精神的な原因があったのです。

 それを説明する前に、妻の身の上についてすこし。

 妻は7人兄弟の7番目です。「マンネー」ってやつです。順番は女女女男男
男女。しかし、上の3人の姉は本当の兄弟ではありません。6.25動乱の直後に
三番目の子供を産むと両親共死んでしまったようです。その三人を引き取った
いきさつについては妻もあまり話したがりません。妻の父親は、妻が五歳のと
きに死んでしまいました。つまり、母親ひとりで七人の子供を育てたことにな
ります。
 現在一番上の姉と一番目と二番目の兄はオーストラリアに住んでいます。ひ
とりはキリスト教の宣教師、ひとりはタクシーの運転手、もうひとりは韓国で
事業に失敗して、二人を頼って去年移住しました。三番目の姉は6.25動乱のと
きお腹の中にいた影響か、精神的な病気で社会生活ができない状態で入院中。
三番目の兄は学習塾を経営していましたが、カード賭博に手を出して多額の借
金を作り現在の消息不明。二番目の姉は結婚せず金貸しをやって生計と立てて、
お寺からもらった男の子を育てています。(韓国では身よりのない子供をお寺
にあずけます。)趣味はお酒と花札。
 当然ハルモニ(母)は、二番目の姉のところにいました。しかし、その姉と
母は非常に仲がが悪いのです。

さて、

 去年の11月、ある「くそおやじ」(こう呼ぶ理由は後で説明します。)から
「娘が日本にいるのなら日本の同居ビザをとることができる。」と言われ、そ
の気になって娘と決別し、日本に来てしまいました。私が反対したにもかかわ
らず、三ヶ月の親族訪問ビザで。
 そのときビザの申請ほ手伝うということで「くそおやじ」も来ました。飛行
機代はハルモニが出しました。ハルモニは一年間のオープンチケットを買いま
した。
 「くそおやじ」は一週間の滞在予定でしたが四日間は知人のところ用事があ
る。ということで何もしませんでした。そして五日目にハルモニと一緒に役所
と入国管理局に行きました。そして、「書類が足りない。韓国から送ってもら
ってから申請しないといけない。」と言い残すと韓国に帰ってしまいました。

 同居ビザなんかとれるわけないんです。そんなことが簡単にできたら日本は
韓国人や中国人やフィリピン人でいっぱいになっちゃいます。
 つまり、騙されたのです。私が何度言っても、妻とハルモニは、「書類をそ
ろえて申請すれば、ビザが出るかもしれない。」「やってみなければわからな
い。」と言って、聞く耳を持たないのです。

 だいたい、この「くそおやじ」は、ハルモニが通っているキリスト教の教会
に、たまに来る、縁もゆかりの無い、赤の他人のただの「くそおやじ」なので
す。そんなやつの言うことを、まに受ける方がどうかしています。
 
 騙されたということは、その後ハルモニの行くところが無くなってしまった
ということです。「もう韓国には帰らない」と言って、死ぬときに着る韓服ま
で持って来たのですから、二番目の娘の所になんか意地でも帰れないのです。
オーストラリアも経済的理由から受け入れ拒否するし、まったく四面楚歌状態。

 入国管理局に頼み込んで、本来は延長できない親族訪問ビザを三ヶ月延長し
てもらって、その間に対策を考えることになりました。対策といっても、残さ
れた道は4つ。
1.日本に不法滞在で居座る。
2.韓国で養老院に入る。
3.韓国でアパートを借りてひとりで住む。
4.二番目の娘の所にもどる。

当然僕は4番を勧めました。しかし、即却下。
1番は医者にかかるときに保険が使えなかったりするので却下。
2番は7人も子供がいるのに体裁が悪い、と却下。

こんな時でも意地や体裁を気にする韓国人です。

残るは3番のみ。

 「ところでお金はだれが準備するんですか?」と私はささやかな抵抗を試み
ましたが2対1、多数決でハルモニの勝ち。
 韓国は基本的にチョンセなんです。6畳1間でも最低最初に120万円は必要な
んです。
 妻はためらうことなく、わずかな貯金と私の稀少なへそくりを引き出し、足
りない分は韓国人の知り合いから借金をしてお金をかき集めました。こういう
とき韓国人って簡単にお金を貸してくれるんでありがたいことはありがたいん
ですが、返すのは僕なんだからね。

 そうして4月20日に妻子とハルモニは韓国に行くことなりました。妻が部屋
を探して妻の名前で契約するためです。
 確か午後2時くらいの飛行機だったと思いますが、その日の昼頃空港から妻
が泣きながら電話をしてきまた。それは、ハルモニのチケットのせいでした。
ハルモニのチケットが無いのです。確かに1年のオープンチケットだったのに
、帰りのチケットが無いのです。正確には、抜き取られていたと表現すべきで
しょう。すぐに韓国の航空会社に電話したところ、あの「くそおやじ」が持っ
てきてお金に換えていった。ということでした。(W230,000)。さすがに気の
強い妻もこれには耐えられず泣き出してしまったようです。

 しかし、幸い平日だったので飛行機に空席があり、5万円を払って韓国行きの
片道切符を買うことができました。オリコカード翌月一括払いで・・・。僕も
泣きたくなりました。
 
 韓国での部屋探しは順調にゆき、無事引っ越しすることができたそうです。
しかし、その頃日本では、心労と過労が原因で僕は顔面神経痛になってしまった
のです。

<哀歌>
それにしても「くそおやじ」!
そこまでやるか「くそおやじ」!
ああ「くそおやじ」「くそおやじ」 推定年齢60歳。
連絡とれない「くそおやじ」 年寄りだまして嬉しいか。
どうしてくれる「くそおやじ」 オリコの返済5万円。チョイナ チョイナ

いったいどこにこの憤る気持ちをぶつけたらいいのか。
僕は韓国の「恨」というものを体験したような気がしました。
 
 それから1ヶ月ほどしてハルモニから電話が来ました。内容は、「今とても
幸せに暮らしている。ふたりにはとても感謝している。」というものでした。
たまたま近くに住んでいた友達が、家が狭い(娘夫婦と同居)のでハルモニの
部屋に居候することになったそうで、その人の娘が食事の世話をしてくれるの
で何の心配も無く楽しく生活しているのだそうです。

妻に「僕の苦労のたまものだね。」と言うと、

目に涙を浮かべて、三つ指ついて

「あなた、本当にありがとうございました。」

と、答えるかと思ったら、

「あなたは別に苦労なんかしてないでしょ。」だって。

顔面神経痛が再発しそうになりました。