◆M10

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 傑作戦車シャーマンには数多くのバリエーションがあるが、それとともにシャーシを流用した派生車両も多い。このM10もそのひとつ。シャーシはVVSSタイプだが車体はシャーマンのものとは違い、装甲が前面だけでなく、側面、後面も傾いている。砲塔も左右の装甲板が左右方向だけでなく前後方向にも傾いている。被弾経始を考慮したその姿はロシアのT34やドイツのパンサーを参考にしたことを物語る。全体のイメージは特にパンサーに似ている。ドイツ軍がパンサーを使ってM10の偽装戦車を作り戦線を混乱させようとしたのも頷ける。

 このキットは、1975年の春に発売されたものだ。当時、タミヤの35分の1キットは、次第にミリタリミニチュアシリーズが充実してきたころで、新製品はまずミリタリミニチュアシリーズとして発売され、次にモーターライズキットが発売されるという順序が定着していたが、このキットは、モーターライズキットとして発売された。車体部品は、数年前に発売されていたM36ジャクソンのものが流用されているが、砲塔は完全新設計。砲塔内部などもよく再現されている。車体のライトガードなどもよりリアルなものに作り変えられていた。この流用に関してはマニアの間でよく知られた話がある。M10の発売後、M36も引き続き販売されたが、M10が発売されたあとのM36のキットは、それ以前のキットに比べてある部分に変化が起きていた。車体前部の機銃がなくなっていたのだ。箱絵からも機銃がカットされていた。種明かしはこうだ。M10の実車には車体前部には機銃はない。しかし、流用しようとしたM36ジャクソンの金型には前方機銃が付いている。そこで、M36の金型から機銃部分をカットした。金型は1つしかないのでその金型はその後M36のキットを成型する際にも引き続き使用された。M36の実車には前部機銃のあるタイプとないタイプがあるので、M10発売以降のM36は機銃のないタイプと考えれば問題はないということにした。その結果、前部機銃のあるM36キットが生産できなくなり、貴重なキットとなったというわけだ。

 さて、話をミリタリミニチュアに戻すと、M10が発売された1975年は、タイガー1やキングタイガー、KV-1などのモーターライズ戦車がギヤボックスをカットして一挙にミリタリミニチュアシリーズに組み込まれる年だ。そんな中でこのM10はその流れと逆行するようにシングルで発売された理由はなぜだろう。M36の部品を使ったとしてもミリタリミニチュアで発売されればよかったのではないかという疑問が残る。それに対する答えはスケールの問題があったのではないかと考えている。これもよく知られた話だが、TAMIYAのモーターライズのシャーマン系列、つまりM4A3E2、M36、M10は実質的に32分の1スケールである。シャーマンはタイガー、T34、M41などに比べると車幅が狭い、そこで1960年代中ごろに発売されたシャーマンは、単2電池を縦に並べる方法をとりそのため、車体をある程度長くせざるを得なかったのだろう。

 M10の発売時点では、当時シャーマン系列(正確にいうとM3あるいはM2系列)としては、ミリタリミニチュアでM3リー、M3グラントがすでに発売されていて、これらは正確な35分の1だった。TAMIYAとしては今後の製品の中心はミリタリミニチュアだから、いずれは、正確な35分の1スケールのシャーマンを発売することを予定していたはずだ。ミリタリミニチュアシリーズは、正確さが売り物なので、M10のミリタリミニチュアにしてしまっては、シャーマンの32分の1問題の種をまたまいてしまうことになるわけで、ここはモーターライズとして発売しようということになったのではないかと思う。

 その後、他のモーターライズキットがどんどんとミリタリミニチュアシリーズへと組み込まれていったにもかかわらず、M10がミリタリミニチュアに入ることはなかった。そして、同時期に発売されたキットが長く店頭で販売されているのにもかかわらず、M10は早々とお店から消えてしまった。まだ、正確な35分の1サイズのM10はTAMIYA から発売されていない。TAMIYA最後の純粋モーターライズキットだったといえるかもしれない。

 さて、TAMIYAのM10のキットもそろそろリニューアルしてほしいものだが、すでに48分の1でM10は発売されているので、35分の1のミリタリミニチュアのM10が発売される日も遠くないのではないだろうか。

 実はM10キットの前身となったM36ジャクソンにはモーターライズ時代のM36B1バッファロー、そしてその前のM4A3E2シャーマンというさらに古いキットの流れがあるのだが、長くなるので、それについてはここでは省略しておく。
 

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各部写真

全体外観。鉄板を張り合わせたような、アメリカの戦車らしくない形状。実寸32分の1の迫力あるボディ。 側面。傾斜装甲の組み合わせはT34やパンサーを想像させる。

前面。流用キットのシャーマンやM36ジャクソンと同様にモーターライズのためにギヤハウジングの形状が実車と少し違うようだ。 後面。スコップ、ツルハシ、バールなどは一体整形。60年代前半のM36B1バッファローの流れを汲むから? ライトトガードは前後ともM36バッファローのものからよりリアルなものに取り合えられている。

巻いた布類やジェリカンなど装備品が豊富に用意されていた。同時期に発売されたT34や4号戦車と同様にサービスたっぷり。 砲塔の後ろが風変わりな形状だ。バランスウエイト?

砲身の形も非常にリアル。新設計の砲塔はなかなかカッコがいいと思う。 車体内部は76mm砲基部などを中心にリアルに再現されている。床が上げ底なのはモーターライズなのでしかたがないのだろう。

キャタピラはジョイントが板をつないでいない妙なタイプ。TAMIYAのM3リー系列、スチュアート系列と同様。まあ、40年近く前ですからね。 左右後ろの装甲板の下部は内側に曲げてある強度的にこれがよかったのだろうか。

ワールドタンクミュージアムの144分「M10パンサー」。


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この本には76mm砲搭載のM4シャーマンの歴史、種類、内部構造イラスト、塗装図などが収録されており、模型作りに大いに役に立ちます。

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